町田営業所業務日報

地元周辺の鉄道・バス車両について気紛れに綴ります。

箱根登山鉄道新時代の開拓者、1000形ベルニナ号

2019年07月31日 | 小田急グループの鉄道・路線バス

1979年よりスイス・レーティッシュ鉄道と姉妹提携を結んでいる箱根登山鉄道ですが、この当時は急速な自家用車の普及で観光地として知名度を上げていた箱根近辺は慢性的な渋滞が発生していました。この影響で、路線バスの定時運行が困難になってしまい、時間に正確な登山電車が見直されるようになったこともあり新型車両の導入が計画され、19813月に45年ぶりの新型車両として1000形が登場し営業運転を開始しました。姉妹提携先のレーティッシュ鉄道ベルニナ線に因んだ愛称のベルニナ号として親しまれていますが、スイスに関連した愛称名を付与する流れはこの1000形から始まりました。 1982年には特急電車ではないものの、鉄道友の会よりブルーリボン賞を受賞しています。1984年には2編成目が導入され、こちらはベルニナⅡの愛称を公式に定められています。

レーティッシュ鉄道カラーを纏うベルニナ号。あじさい電車の季節なのでヘッドマーク(シール式)を掲出しLEDの行先表示に紫陽花のイラストを表示しています。登場時はモハ1形などと同様にロマンスカーのSE車をイメージした塗装でしたが、サン・モリッツ号登場後にHiSE塗装になり、2002年からレーティッシュ塗装になりました。2004年には冷房改造工事に伴い、電源装置を増強する必要性が生じたことから、経費節減の為2000形サン・モリッツ号の中間車を組み込み3両編成化されました。現在はベルニナⅡが登場時塗装に戻され、2編成でカラーが異なっています。

大平台で3000形アレグラと並ぶベルニナ。3000形は箱根登山鉄道初のVVVFインバーター制御を採用し21世紀志向の新世代登山電車となりましたが、1000形ベルニナ号は45年ぶりの新型車として導入され、箱根登山鉄道初のカルダン駆動を採用する高性能車両となりました。どちらも箱根の歴史の変わり目を感じさせる革新的な車両ですが、今後も共に長く活躍して行くことでしょう。 

転換クロスシートから固定式のボックスシートに改造された車内設備。3000形アレグラの就役に伴い、イメージを近付ける為、吊り手の交換更に小改良が施されています。

1000形ベルニナ号の個性的な設備の一つとして、この車内案内表示とドアチャイムがあり、元はLED表示だったものをコイト電工のパッとビジョンに換装しました。ドアチャイムも営団地下鉄タイプの音になり、小田急グループの車両では特異な存在になっています。

 

1981年の初登場から今年で38年の歳月が経過し、すっかりベルニナ号も古参級の車両になりつつありますが、今後も箱根登山鉄道の歴史の転換点を示す存在として、末長く走り続けて欲しいものです。


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[悲報]VVVF車組み込み編成8642F、運用離脱していた件

2019年07月26日 | 東京急行電鉄

400両が製造された東急8500系の内、VVVFインバーター制御試験車を組み込んでいることから密かな人気を集めていた8642Fが、7月19日の38K運用を最後に営業運転を終了し、恩田へ向けて回送されました。現在は廃車に伴う各種部品の撤去と搬出作業が進められています。

34K運用の急行で加速する在りし日の8642F。廃車回送の日が決定してから、この編成のまともな写真はあったか・・・と画像フォルダを漁ってみたら、真夏の猛暑日に撮影したものが2枚出てきました。この編成は1987年に8両編成で登場し、元住吉に配置され暫定的に東横線で8590系と共に急行運用を中心に使用されていました。1991年に編成組み換えと10両編成化(中間車のデハ0808+デハ0711+サハ8980を8637Fに供出、変わりに8637Fから捻出のデハ0802+デハ8799+サハ8974と新製のデハ0818+デハ0718を増結)を実施し、最初の予定通り田園都市線で運用を開始しました。

10両編成の内、デハ0818+デハ0718は次期新型車である2000系の試作車的存在で、1C8M方式のVVVFインバーター制御で新造され、更にデハ0802+デハ8799は8000系グループの更新にVVVF化改造が検討されるようになったため、現車試験の為に界磁チョッパ制御から改造されました。VVVF制御装置は何れもGTOサイリスタを素子に用いた日立製作所のものですが、発する磁励音が異なっており0718と0802の連結面寄りに乗車すると仕切り扉が無い広幅貫通路であることも相俟って、起動時・停止時は豪快に磁励音が混じり合いました。

 

8642Fは1987年の製造ということで、9000系の設計を反映した比較的新しい設備の車両ですが、譲渡先も無く大井町線の20両に続き全車両が解体されるようです。2003年以降は東武鉄道直通にも非対応になり、運転操作や故障時の対応が他の編成と異なっている為厄介な存在だったようですが、それなりに新しい編成から廃車が進行しているのは残念極まりますね。

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新時代の低床車、都営バスのフルフラットバスを観察する

2019年07月24日 | 都営バス

東京都交通局では20181225日より、スウェーデンのScania製フルフラットノンステップバスを日本で初めて導入し運用を開始していますが、戦前以来と思われる海外製車両の導入に衝撃を覚えた方も多いと思います。初運用開始から半年と一カ月が経過して増備も進行し、見かける機会も増えて来ましたが、筆者は今年になってやっとマトモな写真が撮影出来ました。

51系統(駒込駅南口~秋葉原駅)で運用中の2DG-NB4X2BVJ(P-D907号車)。祝日の撮影の為に日章旗を掲げています。導入直後は都02系統(大塚駅~錦糸町駅)間の固定運用でしたが、増備が進み幅広い活躍を見せるようになりました。尚、先述の型式は日本に於けるもので、海外市場ではN280UB4x2EBを名乗ります。

後部から。車内をフルフラット化する為、リア部に走行用エンジンが集中配置されている関係で行先表示のみの設置になりました。シャーシはScaniaが製造していますが、車体はオーストラリアのVolgren製車体を架装しています。車体はアルミ製で、衝突事故などを考慮し強度を更に向上させています。

従来車両に近付けながらも、FRP成形品の座席や大型の窓など欧州車らしい雰囲気が漂う車内。床材は灰色仕上げですが、無地ではなくフローリング模様が入り、間接照明と相まって高級感を出しています。また、試験導入に留まっていたUSBポートが本格的に設置され、Wi-Fi設備と共にサービス向上が図られました。タイヤハウス上の座席が設置されているのもバスマニアには嬉しいポイントです。 

停留所名表示器は大型のものを最前部に設置していますが、燃料電池車に続き中扉付近の天井にも設置しました。多言語表示にも対応しているので、乗客向けの案内も大幅にグレードアップしました。

 

都民の期待を受けて走り出したフルフラットバスですが、フラット構造ではあるものの座席周辺が狭くなったり、フラット化されながらも中扉以降の通路の広さに余裕が無いなど使いにくいと感じる面もあり、改善すべき点も見受けられました。また、フルフラットバスは当面都営バスのみの導入ということで、現在は東京でしか見られない車両ですが他事業者にも波及するのか、今後が色々と気になる存在です。

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箱根登山鉄道モハ1形“サンナナ”、一世紀の歴史に閉幕

2019年07月21日 | 小田急グループの鉄道・路線バス

1日遅れの話題ですが、各所で伝えられているように箱根の顔的存在として君臨して来た登山電車の旧型車の内、吊り掛け駆動のまま残存し人気を集めていたサンナナことモハ1103-107号車の2両が引退しました。

引退が決定し、特製の行先表示板を掲げ、モハ2109号車と併結した美しい3両で走行するサンナナ。側面窓が開けられている様子からも分かるように、吊り掛け駆動のみならず、非冷房で扇風機も備えていないなど、今日では極めて稀な存在でした。

モハ1形は、元を辿れば箱根登山鉄道の前身である小田原電気鉄道が箱根湯本~強羅間を開通させた際に1909年に導入したチキ1形電車(チ=地方鉄道、キ=客車の意)が由来で、1950年に鋼製車体化、1952年に記号をモハ1形に改称、1957年に小田急ロマンスカー3000SE車をベースにした塗装に改めます。これ以降は1989年に登場の2000形までロマンスカーをモチーフにした塗装が続きました。また1990年には輸送力増強の為に3両編成運転を実施することになり、モハ1形は片側の乗務員室を撤去して2両固定編成化することになり、現在の組成になりました。

入生田検車区での公開で最後の晴れ姿を披露するサンナナ。側面サボは三線軌条の撤去で物理的に入線出来なくなった小田原行きを掲げています。

車内設備(107号車で撮影)はロングシートで、寄木細工をモチーフにした柄のモケットに更新されています。車内広告は路線図以外モハ1の写真を掲出していますが、冷房や扇風機が無い天井や旧型国電を思わせる造りの荷物棚にも注目です。


前身となったチキ1形から丁度1世紀の100年、車体更新から数えても69年が経過し大正→昭和→平成→令和と4つの元号を跨いだ驚愕の長寿命と共に、一時期実施されたカルダン駆動化改造(2006年に106号車、翌07年に104号車に施工)も免れ、よくぞ今日まで生き残ったと思います。107号車は小田原市の風祭駅前に社屋を構える鈴廣かまぼこに譲渡され、9月末に開業する「えれんなカフェ」で保存展示されることが決まりましたが、こちらも御披露目が楽しみですね。

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Allegraの相棒、箱根登山鉄道2000形Saint-Moritz号

2019年07月20日 | 小田急グループの鉄道・路線バス

ここ数日、引退が近いモハ1形を追っ掛けていたため、しばらく箱根登山鉄道の記事が続きます。先日は登山電車の最新鋭車3000形アレグラを取り上げましたが、今日はその3000形の相棒を務めている2000形サン・モリッツ(Saint-Moritz)号です。

この2000形は箱根登山鉄道の起源である小田原馬車鉄道の設立が1888年であることから、丁度100年目に当たる1988年に計画が持ち上がり翌年の1989年に登場しました。意外なことに登山電車では記念すべき初めての冷房車です。箱根登山鉄道では1979年以来レーティッシュ鉄道と姉妹提携を結んでおり、提携から丁度10周年の節目に登場することから、スイス政府とサンモリッツ観光局の協力で命名されました。正面にも愛称のヘッドマークを掲げていますが、大変由緒正しい名称だったのですね。尚、サンモリッツはウィンタースポーツの中心地として有名ですが、ベルニナエクスプレスの発着地、またグレッシャー・エクスプレスの経由地でもあり世界的に著名なスイスの観光地です。 表記方法に関してはロマンシュ語ではSan Murezzanとなりますが、日本ではフランス語表記が定着している為、ヘッドマークの表記や文献などもそれに倣っています。

運用開始時は3両編成で登場し、小田急10000形HiSEベースの塗装でしたが登場から10年目の1999年にはレーティッシュ鉄道カラー(現在の小田急1000形登山線用編成が纏っているカラー)に変更、更に2004年には1000形ベルニナ号の冷房化に伴う電源装置確保の為に1・2編成が中間車を供出するなど、短期間の内に目立つ動きが見られます。3000形アレグラとの連結対応改造は2014年で、翌年3月にはイメージの統一を図るため車体の塗装をアレグラ準拠に改めました。ただし2018年には第1編成がHiSE塗装に戻され、現在は在籍する編成全てのカラーが異なっています。 

元々はボックスシート配置でしたが、2010年にロングシート化改造を受けた車内設備。第2編成は化粧板や座席モケットが更新され、外観のカラーリングのみならず車内も3編成で異なった配色・設備になりました。

後年設置された車内案内表示は現在主流のワイド液晶画面で、3000形並みにサービスレベルを引き上げました。今後は更に機器更新が予定されており3000形と手を組みながら長く活躍して行くんでしょうね。


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