これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

通知表攻防戦

2010年03月28日 22時05分01秒 | エッセイ
 そういえば、まだ娘の通知表を見ていない。
 教員は、人の子供の世話で手一杯となり、自分の子供を後回しにする傾向がある。修了式の日に、「成績どうだった? 通知表見せて」と一声かけなかったことを、私は反省した。
 娘は部活で留守だったが、どこにあるかの見当はつく。カバンの近くに放置されているクリアーフォルダが怪しい。手に取り中をのぞくと、やはり通知表が入っていた。中学一年の成績は、いかほどのものか。
 結果からいえば、思っていたよりマシだった。滅多に机に向かう姿を見ないから、2や3ばかりと予測していたのだ。決して優秀とはいえないが、どうにか許容範囲に入っている。ひとまず、ホッとした。

 私が中学生のときは、親に催促されるまでもなく、通知表を見せに行った。
 母から文句を言われた記憶はない。いつもニコニコ笑って、「ああ、よかったねぇ」と言ってくれた。母は長女だったから、妹3人と弟1人の面倒をみなければならず、勉強は二の次だったらしい。勉強に関しては許容範囲が広く、どんな成績でも褒めてくれた。
 しかし、問題は父だ。子供を褒めたら、この世の終わりが来ると思っているかのように、何かとケチをつけてくる。
「もっと数学を頑張らないとな」
「英語が下がったじゃないか」
「お前は体育が苦手だな」
 よくもまあ、次から次へとダメ出しするものだと、子供心にも呆れた。私だけでなく、2歳上の姉も同じように小言を言われていた。
「ねえ、お姉ちゃん、お父さんって絶対褒めないよね」
「うん、けなしたほうが伸びると思っているみたい」
「わっ、古~い! スポ根じゃあるまいし、今どきそんなの流行らないじゃん」
「しかも、狙いが見え見えってところが甘い」
 父の思惑はわかっていたが、成績がよいに越したことはない。反発しても、自分が損をするだけだとわかっていたから、せっせと勉強に励んだ。
 私たちが、父への不満を母に訴えても、母は常に父の味方だった。
「お父さんは頭のいい人だから、お父さんの言う通りにしておけば大丈夫!」
 そんなわけで、私も姉も、父はよほどできる人なのだと思いこんでいた。

 しかし、ある日、姉がとんでもないものを発見した。
「この前、お父さんの通知表を見つけちゃったの!」
「ええっ! どこで?」
「押し入れの奥の方」
 残念ながら、私は見ていない。姉は自分が見たあと、痕跡を残さぬように、すぐさま元の場所に戻してしまったからだ。
「で、どうだった?」
「それがね、全然よくない。3ばっかりだったよ」
「なーんだ、3ばっかりか」
「その程度の成績で、よく私たちにあれこれ言えたね」
「本当だよ。自分の成績見てからものを言えって」
 以来、父の威厳は地に落ちた……。
 母の許容範囲は、実に広かったというわけだ。

 私の通知表は、いったいどこにあるのだろう。
 娘の目に触れぬよう、焼却処分しておかないと……。




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テレビの奴隷

2010年03月25日 21時05分06秒 | エッセイ
 居間でブログを書いていたら、夫がやってきた。テレビの前に陣取り、右手を伸ばし、リモコンをプチッと押す。
 まもなく画面からは、ひっきりなしのおしゃべりと笑い声が聞こえてきた。とても集中できない。私は早々にノートパソコンをシャットダウンし、両手でかかえて台所に移動した。静かなところでないと、文章を考えられないのだ。
 私を居間から追い出した形になっても、夫はまったく気にせず、首を前に突き出し、鳩のような姿でテレビに見入っている。

 こういうところが、イヤなのよね……。

 結婚当初から18年間変わらず、夫はテレビをつけっ放しにするタイプである。私は騒々しいのが苦手なので、夫が席を外したり寝たりすると、チャンスとばかりに消してしまう。
 消されたことに気づくと、夫は再び電源を入れ、私は顔をしかめる。この繰り返しだ。
 天気予報以外、私はほとんどテレビを見ない。テレビをありがたいと思うときは、せいぜい、話の弾まない客が来たときくらいだろう。
 だが、夫にとって、テレビは重要な情報源のようで、やたらと「テレビでこう言っていた」を連発する。そして、私よりも信頼している。
 たとえば、私が天気予報を見て、「今日は夕方から雨だから傘を持っていったほうがいいよ」と言っても生返事だ。でも、直接画面から「傘を持ってお出かけください」と聞くと、素直に言う通りにする。実に面白くないが、これを逆手に取ってはどうだろう。

 頼みごとがあっても直接話さず、要求をビデオ撮影しておくのだ。それを再生してテレビ画面から、「軽井沢に一泊旅行してきてもいいかしら」などと問いかければ、反射的にオーケーしてしまう気がする。
 夫は、まさにテレビの奴隷。
 解放する手立てはないものだろうか。
 趣味のバレーボールの他は、テレビ鑑賞以外にやることがないのかもしれない。では、読書を勧めてはどうだろう。
「本なら読んでいるよ。ほら」
 夫が私に見せたのは、『原辰徳 勝利をつかむ情熱の言葉』や『負けん気 立浪和義』など、スポーツ関連の本ばかりであった。

 こんなの、本のうちに入らないよ!

 以前、荻原浩『明日の記憶』を読んだとき、いたく感動して夫に貸したことがある。渡辺謙主演で映画化されたこの本は、若年性アルツハイマーの症状が緻密に描かれている。
 夫は黙って受け取りページをめくっていた。
「どう? 『明日の記憶』は進んだ?」
 翌日聞くと、意外な答えが返ってきた。
「もう全部読んだよ。すごく切ない話だね」
 夫は、この厚い本を一日で読み切ったという。文学に興味がないのだと思っていたが、いい本にめぐり合えばちゃんと読めるのだ。
 では、自信を持って勧められる本を探せば、夫をテレビから解放することができるのかもしれない。まずは、池井戸潤『空飛ぶタイヤ』あたりでどうだろう。
 
 先日、そんな計画を、エッセイ仲間のマダムたちに披露したところ、かなり不評だった。
「相変わらず、上から目線ね」
「『明日の記憶』が読めたからって、本が好きとは限らないわよ。明日はわが身と思って読んだだけかもしれないし」
「人の楽しみを奪い、自分の好みを押し付けるのはダメよ。あなたがされたらイヤでしょ」
「テレビの奴隷から、妻の奴隷に変わるだけじゃないの?」

 うーん。
 夫の残り少ない人生を思うと、うるさいのを我慢して、好きなだけテレビを見させてあげたほうがいいのだろうか。
 今日も、夫は身を乗り出して、奴隷生活を満喫している……。




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長谷川等伯展のツッコミどころ

2010年03月21日 21時01分52秒 | エッセイ
 上野・東京国立博物館 平成館で開催されている『長谷川等伯展』に行ってきた。明日3月22日が最終日だから、見逃したくなかったのだ。



 同じことを考える人は多いようで、会場は大混雑であった。



 10時50分に到着したときには、すでに入場制限がされており、最後尾に「40分待ち」という札を持った係員が立っていた。
 一瞬動揺したが、これを目当てに、はるばる練馬から上野まで来たのだから待つしかない。だが、一人だったから話し相手はいない。村上春樹の『めくらやなぎと眠る女』を読みながら、遅々として進まない行列の後ろについた。
 実際のところ、待ち時間は30分足らずだったようだ。エスカレーターを上がって、会場2階の展示場まで、思ったよりも早く到着できた。
 しかし、内部もすさまじい混雑ぶりで、どの作品にも四重五重の人垣ができている。こういうとき、背の高い人は得だ。学生風の長身カップルが、涼しい顔で人垣の上から鑑賞している。男の子は2mくらい、女の子も180cmほどありそうな長身だった。
 155cmしかないちびっ子の私は、人と人のすき間から覗くような状態で、苦労の末鑑賞した。比較的、年配の小柄な方が多かったから、作品を見ようと誰もが四苦八苦したに違いない。会場内はかなりの熱気で、私は着ていたジャケットを脱いだ。
 
 長谷川等伯は、今の石川県七尾市出身の絵仏師であった。30代で上洛し、絵師として本格的な活動を展開するわけだが、一介の地方絵師がその画力を認められるまでには、相当な努力を要したようだ。
 やがて、名門・狩野一族の血統書つきである狩野永徳を差し置いて、秀吉に取り立てられるときがやってくる。一代にして「天下画工の長」に上りつめるサクセスストーリーは、見ていて小気味がいい。
 とりわけ、重要文化財となっている山水図襖のエピソードが面白かった。かねてから等伯は、春屋宗園(しゅんおくそうえん)という大徳寺の住持に、襖絵を描きたいと願い出ていたが、断られていたそうだ。そこで、等伯は春屋の留守中に勝手に寺に上がりこみ、寺衆の制止も聞かず、その襖絵を描き上げたのだという。「なかなかやるな」と喝采したくなった。
 国宝3件、重要文化財27件を含むこの回顧展は、見ごたえたっぷりで、実に目の保養になる。頑張って見てよかったと思う。
 チケットに描かれているのは、国宝「松林図屏風」である。



 写真で見る限り、私はこの絵のよさが、いまひとつわからなかった。しかし、実物は全然違う。吸い込まれるような遠近感があり、墨一色でありながら、唸るほど巧みな濃淡の演出に脱帽である。

 会場を出ると、入口の行列が見えた。先ほどよりも50mほど長くなっているようだ。でも、係員の札には相変わらず「40分待ち」と書いてある。

 50分にしないの!?

 10分伸びると、客足に影響するのだろうか……。どんなに長い行列ができても、最後尾には「40分待ち」の札を持つ係員がいるような予感がした。
 
 記念に図録を買ったのだが、厚さ27mmのえらく立派な本である。ひと目見て、私は電話帳かと思った。
 家でタウンページと比べてみたら、なんとタウンページの方が薄い。



 中身が充実していて結構だが、相当重いから、それなりの準備が必要となる。帰りにデパ地下で買った、お弁当2人前のほうが軽かったほどだ。しかも、人身事故で山手線が止まってしまい、運悪く長時間持つ破目になった。
 4月からは、京都に場所を移しての開催となる。
 図録を持ち帰るため、リュックを用意したほうがいいかもしれない。




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ハーフのメダカ

2010年03月18日 20時56分59秒 | エッセイ
 先日、デパートまでメダカを買いに行った。昨年末に、最後のメダカが死んでしまい、水槽にはモノアラガイとサカマキガイしかいないからだ。
 フィッシュショップをのぞくと、何種類ものメダカが目に入る。

 これが、一番お手頃なヒメダカ。体の色から、緋目高と書くらしい。



「5匹 105円。オス・メス・大きさの指定はできません」と水槽に書いてある。

 シロメダカ。がり勉で、ひ弱そうなイメージだ。




 白があれば黒もある。地味なクロメダカも、スイスイ泳いでいた。




 さらに、アオメダカもいた。




 白黒青すべて「1匹 210円。10匹 1680円」と表示されている。こちらは、オス・メスの指定ができるらしい。
 
 右端の水槽には、出目の「楊貴妃」というメダカが、優雅にくつろいでいた。



「1匹 945円」という値札に、「高ッ!」と驚いた。他にも、3000円を超える高価なメダカがいる。
 マニアではないので、こんなに立派なメダカはいらない……。

 さて、どれにしよう。
 私は種類を決めかね、店員に相談することにした。
「あのう、メダカが欲しいんですけど、一種類だけにしておいたほうがいいですか?」
 カニは、違う種類のものを一緒にしたらいけないという。メダカもかと予想したが、そうでもなかった。
「いえ、混ぜても問題ないですよ。むしろ、かけ合わせで変わった種類ができるかもしれませんね」
「へえ」
 それは面白そうだ。私は俄然、乗り気になった。
「じゃあ、ヒメダカ5匹と、シロメダカ6匹、アオメダカも6匹ください」
「わかりました。オス・メス半々くらいにしますか?」
「はい、そうしてください」
 縁日の金魚のように持ち帰るのかと思ったら、酸素を入れて、ビニール袋を密閉してくれた。これで電車の中でも安心だ。



「こちらの水温は低いので、袋のまま2時間ほど水槽につけて、水温調節したあと放してください」
 ふむふむ、デリケートなんだな……。
 指示通りにして、メダカを水槽に放すと、元気に泳ぎ始めた。大きめのシロメダカに、引き締まった体のアオメダカ、小さなオレンジ色のヒメダカが、互いにぶつからないようにすれ違う。なかなかの賑わいである。
 人に例えれば、コーカソイドにモンゴロイド、オーストラロイドなどの異なる人種が、ひとつ屋根の下で暮らすようなものだろうか。やがては、友情や愛情が芽生え、ハーフの稚魚誕生となるかもしれない。

 なんて、インターナショナルなんでしょう♪

 クロメダカも買うべきだったと後悔した。野性的でしなやかなクロメダカは、力強いネグロイドのようだ。これ抜きで、水槽の小惑星は完成しない。
「また来た」と思われてもいいから、クロメダカを買ってこよう! と決心した。

 たくさん、卵を産んでね☆




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夫婦対決

2010年03月14日 21時12分49秒 | エッセイ
 ようやく、話題の映画『アバター』を見ることができた。
 3Dということもあり、迫力があってとても面白かった。
 しかし、先日のアカデミー賞では、作品賞や監督賞を逃してしまい、気の毒に思う。ジェームズ・キャメロン監督も、さぞかし無念だったろう。
『アバター』に代わって6部門を受賞したのが、キャメロン監督の元妻であるキャスリン・ビグロー監督の『ハート・ロッカー』だったことは記憶に新しい。
 離婚した元夫婦対決は、女性側に軍配が上がったわけだ。オスカーに輝いた、初の女性監督に敬意を表したい。

 元でも今でも、夫婦で対決するとなると、なかなか辛いものがある。
 教員になってしばらくの間、私は女子バレーボール部の副顧問をしていた。キャリアの長いベテランの男性が正顧問だったから、技術的な指導はからっきしである。
 夫も別の高校で、女子バレーの監督をしていた。彼は、日体大のバレー部卒で、バレーボールの指導歴ウン十年である。
 お互いの高校が近かったこともあり、夫のチームと練習試合をすることも多かった。いつも、こてんぱんに負かされたものだ。
 しかし、あるとき、公式戦で夫の高校と対戦する破目になる。組み合わせが発表になったとき、私も夫も目を疑った。間の悪いことに、正顧問の奥さんが出産を控えており、試合には来られないという。
「笹木先生、大変申し訳ないけれど、代わりに監督をしてください」
 正顧問に頭を下げられ、私がどんなに慌てたか、おわかりになるだろうか。
 ちょうど3年生の引退試合で、ただでさえ責任重大なのに、夫の率いるチームを相手に戦えと言われたのだから。突如、回転性のめまいに見舞われた感じだった。

 勝てっこないよ……。

 夫婦対決がイヤで、どこか遠くに逃げてしまいたかった。
 家では、試合の話題が一切出ない。夫も私も、その話は避けていたのである。
 試合当日も、「じゃあ、あとで」程度のやりとりしかしなかった。しかし、コートの中にはやっぱり夫がいる。予定通り、戦わねばならないのだ。
 試合開始のホイッスルが鳴り、いざ勝負である。こちらの生徒は、その日、やけに調子がよかった。ミスも少なく、よく声を出して動いている。
 対する夫の生徒は、やたらとミスが多い。お見合いしてしまったり、サーブやスパイクが大きくラインを割ってしまったりという具合だ。
 そんなわけで、力の差は大きいのに、点数は僅差でこちらがリードしていた。

 そろそろ夫は、タイムアウトを取るだろう。選手に的確なアドバイスを与え、落ち着かせれば、たちまち逆転される。リードは一時的なものだと思ったほうがよい。
 しかし、夫は腕を組んでベンチに座ったまま、微動だにしない。あれよあれよという間に、波に乗った私のチームが、1セット目を取ってしまった。
 狐につままれた思いでコートチェンジをし、選手に言葉をかける。
「よく頑張ったね! 2セット目もこの調子でいこう!!」
「ハイッ!!」
 私は素人だから、実のところ、何がどうよかったのか、よくわからない。隣のコートをチラリと見ると、夫が選手を集めて、低い声で何やらささやいている。選手は下を向いたまま、「ハイッ」「ハイッ」と元気よく返事をしていた。

 次はやられる……。

 私はビビりながら、2セット目を迎えた。
 案の定、夫のチームが先制した。緊張がほぐれたのか、1セット目とは動きが違う。
 と思ったのはつかの間で、またもやミスが多くなってきた。サーブレシーブが乱れ、思うように攻撃できないようだ。相手チームのミスは、こちらのチームを勢いづける。
 徐々に点差を詰めていき、ついに逆転した。
 夫を見ると、1セット目と同じで、まったく動く気配がない。タイムもメンバーチェンジもなし。いつもだったら、「流れを変えないと」とあれこれ手を打ってくるのに、どうしたことだろう。
 とうとう終了のホイッスルが鳴り、私のチームは夫のチームにストレート勝ちしてしまった……。

 ビグロー監督と違い、私は運と、夫の手加減で勝たせてもらったようだ。
 聞くところによると、後日、夫は同僚に「あのときは、本当にまいった」とこぼしたらしい。
 勝っても負けても、夫婦対決は、神経がすり減るものである。




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アイルランドの首都は?

2010年03月11日 20時56分52秒 | エッセイ
 私にとって、手帳は必需品である。
 去年は、2009年3月1日から2010年3月31日までの手帳を買ったので、そろそろ買い替えの時期だ。
 デパートをのぞくと、色とりどり、大小さまざまな手帳が、何百冊と並んでいた。
 私が使いやすいと感じるものは、1日ごとに時間帯の目盛りがついている、こんなタイプだ。



 見た目はさほど重視しないが、色は赤を選ぶことが多い。
 だが、このおびただしい数の中から、条件に合うものを探すのは面倒くさい。うんざりして視線を泳がせていると、今使っている手帳と同じものが目に入った。
 これなら確実に時間の目盛りがある。しかも、隣には色違いの手帳があるではないか。

 これでいいや。

 私は紺の手帳をわしづかみにし、レジに並んだ。お値段は1470円なり。
 即断即決。私の買い物は時間がかからない。

 早速、家で手帳を開いてみた。
 まっさらで、何の予定も書かれていないと、「これから色々なことが待っているのだ」と胸が高鳴る。早く遊びやお出かけの予定を書き込みたい。まあ、実際には、仕事の予定ばかりになるのだが……。

 翌朝、出勤したとき、まず自分のレターケースをチェックした。ここには配布物などが入っている。私は比較的まめに確認するほうだと思うが、ずぼらな人は全然見ていない。プリントやら手紙やらが、あふれんばかりにたまっているところもある。
 私のところには、プリントが数枚入っていた。左手で取り出すと、紙の間に挟まっていたものがドサリと落ちてきた。
 それは、教職員組合から配布される2010年度の手帳だった……。
 私は軽い衝撃を覚えた。

 何で、手帳を買った翌日に配るかなぁ!?

 中を開けてみると、ちゃんと時間の目盛りがついている。



 見た目の地味さもいい勝負だ。
 左が前日買ったもので、右は配られたものである。



「アイルランドの首都は?」
 唐突に、学生時代、アルバイト先のレストランで、チーフの男性から出されたクイズが浮かんできた。
「アイルランドの首都ですか??」
 私は地理の記憶をたぐり寄せた。しかし、思い出せない。
 彼は持っていた大皿料理を厨房に戻し、高らかに回答した。
「ダブリンだよ!」
 あとから知ったことだが、手違いでオーダーが重複すると、このチーフは余った料理を片手に、必ずこう言うのである。

 これもダブリだな……。
 うーん、悔しい。




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除草 草刈り 草むしり

2010年03月07日 20時32分04秒 | エッセイ
 先日、こんなものを買った。



「うぶ毛すっきりツイーザー」という、ムダ毛を抜くためのグッズである。上部が細かなスプリング状になっており、ここにムダ毛を巻き込みながら脱毛する仕組みになっている。



 ムダ毛に悩む女性は多い。
 私の場合、腕や足にはほとんどムダ毛がない。しかし、顔は人の2倍、うなじから背中にかけては3倍もの毛が密集している。
 顔のムダ毛の気づいたのは、姉と一緒に初めてパックをしたときだ。2歳上の姉が、美容のためにパックを買ってきた。洗顔後の清潔な顔に均等に塗り、乾いたら剥がすというタイプのものだった。
「もういいんじゃないかな」と、先に姉が剥がしはじめた。ペロペロペロッと、ゆで卵の殻を剥くように素肌がのぞく。私も真似してパックに手をかけた。しかし、チクチクした痛みを感じる。
 パックにうぶ毛がくっつき、剥がすたびに引っ張られて痛いのだった……。
「あはは、アンタは毛深いからね~」
 姉は人の不幸を笑い飛ばしたが、こちとら当事者だ。痛みと闘いながら、無言で休み休みパックを剥がしていった。どうにか終わったときには、刺激で顔が赤くなった。
 美容院に行けば、「うわっ、えり足の毛が渦巻いてますよ」と驚かれる。和装の着付けを頼めば、「必ずうなじを剃ってきてくださいね」と念を押される始末……。とても人目にさらせず、髪を下ろして隠している。

 そもそも、ムダ毛というものは、庭の雑草と同じである。何の害もないけれど、気に病む人は処理するし、気にならない人は放置する。
 処理の仕方も人それぞれで、根こそぎ抜くなら軍手をはめ、腰を落として引っこ抜く。毛抜きを使い、一本一本確実に脱毛するというわけだ。
 しかし、私の場合は絶対数が多いので、家内制手工業ではとても追いつかない。
 円盤状の刃がついた草刈機で、小石をよけながら、地面すれすれの高さから雑草を刈り取るのがよい。つまり、カミソリで剃ってしまうのだ。だが、すぐに伸びてきてしまうし、生え始めがジョリジョリする。手っ取り早いけれども、あまり気分はよくない。
 
 そんな理由もあり、簡単に根元からムダ毛を処理することができるなら、この「うぶ毛すっきりツイーザー」を試す価値があると思った。
 まずは洗顔し、湯船に浸かって毛穴を開く。鏡を見ながら、毛の流れに逆らうように、皮膚にスプリングを滑らせる。
 チクチクと、毛が引っ張られる刺激を感じる。抜けているのだろうか。ツイーザーのスプリングに、毛が何本も挟まっている図を思い浮かべる。



 頬からスプリングを離し、抜けた毛を確認してみた。しかし、どこにもそれらしいものは見当たらない。製品の欠陥か、私の使い方が悪いのか、うぶ毛は引っ掛かっただけで、1本たりとも抜けていなかった。

 どういうこと?

 私は鏡に顔を近づけ、うぶ毛の状態をチェックした。スプリングを何往復もさせたはずの頬には、同じ高さで規則正しく整列したうぶ毛が、ピンと上を向いて生え揃っている。生き生きとして、まるでネギ畑のように広がっているではないか。
 私は激しく失望した。

 しゅ、収穫しなくっちゃ!!

 やっぱり、カミソリが一番かな……。




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リスクと副作用

2010年03月04日 21時04分58秒 | エッセイ
「クロミッド錠50mg」
 さて、何の薬でしょう?



 これは、先日婦人科で処方された、排卵誘発剤なのだ。
 二人目が欲しいのに、なかなかできなくて困る。毎月、排卵しているようだが、この薬を飲むことによって、受精のタイミングを図ることができるらしい。

「多胎のリスクがあります」
 私は、主治医の説明に耳を傾けた。確率的には相当低いそうだが、万一、2個も3個も排卵してしまったとき、双子、三つ子が生まれる可能性がある。
 知人に三つ子はいないけれども、双子は結構いる。学生のとき、アルバイト先で一緒だった阿部という男子には、双子の弟がいた。二人とも魚に似ていたので、今でも顔をおぼえている。
「双子っていいね。仲よさそう」
 私の問いかけに、阿部は冷めた声で答えた。
「よくないよ。双子は仲いいか悪いか、どっちかだよ。うちは悪いほう。家でも全然口きかない」
 そういえば、昔読んだ漫画に、双子の育児でノイローゼになるお母さんの話があったっけ……。
 交互に夜泣きして、お母さんは眠れない。
 一人のおむつを換えたら、もう一人が待っている。
 一人にミルクをあげても、まだ一人残っている。
 終わらない育児に、お母さんは心身ともに疲れ果ててしまうのだ。

 うーん、やっぱり多胎は怖いな……。

 楽しそうだと思ったのだが、一人であることを祈ろう。
 主治医は、排卵誘発剤の副作用として、「頭痛、腹痛」をあげた。それくらいなら大丈夫だ。可愛いベビーちゃんのために頑張れる。
 だが、薬局で薬を受け取るとき、甘かったと思い知らされた。
「霧視等の視覚症状があらわれることがありますので、車の運転や危険のともなう機械の操作等は控えてください。下腹部痛があらわれた場合は主治医または薬剤師に連絡してください。主な副作用は、下腹部痛、眼のかすみ、発疹、頭痛、吐き気、嘔吐、食欲不振、尿量増加、口渇、疲労感、気分が不安定、ほてり等です」

 薬剤師の説明に、血の気が引いていった。
「そんなにあるんですか!?」
 薬剤師はニコリと笑って返した。
「報告された症例です。私も飲んだことがありますが、何ともなかったですよ」

 ホンマかいな……。

 こわごわ、一錠飲んでみた。
 カプセルと違って水には浮かず、ポトリと舌に落ちて、へばりつく。
「苦ッ!」と悲鳴をあげそうになった。かなり不味い……。

 さて、問題の副作用は……。
 2時間後くらいから、胃がムカムカしてきた。が、我慢できないほどではない。
 あとは、やたらと眠い。
 いや、これは副作用ではなく、睡眠不足だからか……。
 ダイエット中の身としては、ぜひ、食欲不振になりたい♪




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たまにはゆっくり眠りたい

2010年03月01日 21時35分57秒 | エッセイ
 昨日は、両親や姉妹を呼んで、ひな祭りのお祝いをした。
 食事のメニューには気をつかう。不味いものを振る舞うわけにいかないから、無難にお寿司をとろう。あとは、かぼちゃの自家製コロッケとチキングラタン、豚汁、野菜を用意すればいいか……。思いつくままメモを取り、食材を求めてスーパーに出かけた。
 ところが、スーパーでバッグの中を見たとき気がついた。

 しまった! メモ忘れてきちゃった!!

 どうやら、買うものを書いただけで安心し、コタツの上にメモを置きっぱなしにしてきたらしい。バッグの中にはお財布だけが入っていた。
「えーと、えーと」
 私は一生懸命メモの内容を思い出し、どうにか買い物を終えた。
 家で確認すると、買い忘れはゼロだ。私は、「ほーっほっほっほ」と勝ち誇った笑い声をあげ、自慢の記憶力が健在であることに満足する。
 コロッケの下ごしらえをしていたら、無性に眠くなった。一年365日、年中無休で私は睡眠不足である。ブログを書いたり、ネットサーフィンをしたりで、ついつい寝る時間が遅くなるのだ。

 無事に料理ができた頃、両親と妹一家、それに姉がやってきた。
「この前、トルコに行ってきたんだよ。これ、お土産」
 母が、トルコ石のペンダントを買ってきてくれた。



 ハート型が可愛くて、とても気に入った。
 トルコには行ったことがない。病み付きになった友人もいるくらいだから、きっといいところなのだろう。仕事を休み、好きなだけ寝て、パソコン・携帯なしで一週間くらいのんびりしたら、寿命が延びそうな気がする。

「コロッケ、美味しくできたね」
 料理を褒められ、気をよくした。姉が持ってきたワインも、さっぱりして飲みやすい。決して飲みすぎたとは思わないのだが、疲れていたのかもしれない。ケーキを食べる前に、私はすっかり酔っ払ってしまい、眠りこけてしまった。
 途中で、「ケーキだよ」と起こされた気がする。私はムクッと起き上がり、フォークで大好きなチョコレートケーキをつついて食べた。カップにコーヒーが入っていた覚えもある。しかし、食べ終わったら、すぐまた横になってしまった。
 ふと、目を覚ましたら、あたりが静かになっていた。時間は午後6時……。
「もう、みんな帰っちゃったよ」
 夫がお皿を拭きながら、呆れたような口調で言った。しまった、寝過ごしたか!
「ああ、やっちゃった」と後悔したが、まだ眠い。どうせ、客がいないなら、もっと寝てしまえと開き直った。
 私は布団を引っ張り出し、本格的に寝はじめた。
 結局、起きたときには、午後9時半を回っていた。夫も娘も、お風呂を終えたところだった。「ブログを書こうかな」と思ったが、体が重くてだるい。頭もうまく働かない。
 
 やーめた、寝よう。

 私はヨーグルトを食べてお茶を飲み、お風呂のあとは、また布団に入った。一体何時間寝たのだろう。翌朝、5時に起きるまで、おそらく12時間近く寝たのではないだろうか。
 こんなにたくさん寝てしまうと、すべてが夢だったような気がしてくる。

 本当に、ペンダントをもらったのかな……。

 引き出しを開け、私はトルコ石のペンダントを探した。
「あった、あった」
 どうやら、夢ではなかったらしい。

 トルコ石、ターコイズの石言葉は「成功」「命中」だそうだ。
 災いから身を守り、成功へと導くパワーストーンで、仕事における成功運をもたらすお守りと言われている。

 実力ないので、石に頼ります……。



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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (16)
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