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御作(みつくり)のサザンカ 日本屈指の一株

2019-12-29 14:29:42 | 冬の花 山茶花の旅

 

 2010年の「冬の花 山茶花の旅」に9年ぶりの追記です。

 

 次の目的地は「御作(みつくり)のサザンカ」です。 

 

 愛知県北設楽郡設楽町津具字上下留を朝7時過ぎに出て、ナビのガイドに任せ県道80号を西へ向かいました。

 
 やがて車は、葉を落とし始めた森の中を尾根筋へと上って行きます。
 
 

 
 坂を登りきると、面ノ木園地(面ノ木原生林)と表示された自然公園が広がっていました。
 

 
 晩秋の木立の狭間に柔らかな陽の光が射し込み、落葉に色づく森の床が燃えていました。
 

 
 予定が無ければ此処で、登山用の携帯ストーブでお湯を沸かし、コーヒーの香を楽しみたいところですが、今日は先を急ぐことにします。
 
 曲がりくねった、峠を下る道を20分程も走り続け、突き当りのT字路を右に曲がるとすぐ、「もみじまつり」の看板を掲げた公園を見かけました。
 

 
 大井平公園という良く名の知れた公園のようで、川岸に並ぶモミジが見事な朱に染まっていました。
 

 
 名倉川に掛かる「風のつり橋」の上から振り返ると、モミジの紅とイチョウの黄色が見事なコントラストを見せていました。

 このように鮮やかな紅葉と黄葉がタイミング良く隣り合う姿は、めったにお目に掛かれるものではありません。
 
 このように予期せぬ幸運に巡り合うことで、旅は更に、記憶の地層に思い出を重ねてゆきます。
 

 
 大井平公園を出て、国道153号、県道33号を小一時間ほど走り、ナビが「目的地に到着しました」と告げた場所は、田が丘陵地の狭間に広がる、ごくありふれた農村の一画でした。

 その地は 愛知県豊田市御作町正野平262

 道路脇の人家の庭先に人影を見かけたので、「御作のサザンカ」の場所を尋ねました。

 教えられた通りに、一軒の農家へと通じる坂道を登ってゆくと、枝を広げたサザンカの巨木が見えてきました。
 

 
 近づくにつれて、「御作のサザンカ」の見事さが次第に明らかとなってきます。
 
  
 

 木の横に解説板が掲げられていました。
 

 
 市指定文化財(天然記念物) 「御作のサザンカ」

 指定 昭和63年3月2日
 樹高 約7.1m
 胸高周 約2.2m
 枝張り 約4.9m
 
「根本より胸高の部位の方が太く、地上2mで枝が8本くらいに分かれ、さらに細かく分かれて全体では樹冠の平らな樹形となっています。花数が非常に多いことが特徴です。
 
 と記載されています。

 庭に出てこられた、所有者の水野様にお話を伺うと、このサザンカの起源は定かではなく、この地に水野家が建つ前から、この木があったかもしれないのだそうです。

 毎年12月10日頃から花を咲かせ、今でも幾つかの実を付けるそうです。

 たまたま一輪だけ花を見ましたが、全自動の安価なデジカメで写したためピントが合っていないのが悔やまれます。
 
 
 
 サザンカは20畳程に区画された、庭から2m程も低い段状の、日当たりの良い場所に育ちます。
 
 周囲に木の生育を妨げるものは一切なく、ツバキやサザンカの生育に適した傾斜地なので、これからも日本有数のサザンカ古木として、花を咲かせ続けるだろうと思えます。

 それにつけても、「御作のサザンカ」、本当に見事な一株でした。
 
 
 

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上下留(かみくだる)のサザンカ

2019-12-16 17:11:53 | 冬の花 山茶花の旅

 

 2010年の「冬の花 山茶花の旅」に9年ぶりの追記です。

 

 豊橋の医王寺の次に私が目指したのは「上下留(かみくだる)のサザンカ」です。


 自宅を出る時、ナビに目的地の住所を入力してありますから、陽が落ちた道をナビのアナウンスに任せて走り続けました。


 市街地を離れる前に、国道沿いの中華料理店で夕食をとり、スーパーマーケットで寝酒と明日の朝食を整えました。

 今夜はコンビニもないだろう山村で車中泊の予定です。


 林道のように細く曲がりくねる国道151号を走り続け、ナビが「目的地に到着しました」と告げた場所は、道路の両脇100メートル程に数件の民家が建ち並ぶ山里でした。


 全ての民家の背が森の闇に紛れ、夜空に星が瞬きました。


 私は目にした駐在所に入り、机の上の受話器をとって「すみません、この辺にサザンカの古木があると聞いて来たのですが、詳しい場所を教えて頂けないでしょうか」と尋ねました。


 すると、電話口の駐在さんが、「インタフォンを押して家内を呼んで下さい」と仰り、その通りにすると、電話を代わった奥様にお話しして、駐在所隣家の御主人に、私を案内する為の依頼をするように手配して下さったのです。


 奥様は腕に1歳ぐらいの赤ちゃんを抱いておられました。


 そして私は隣家の御主人に導かれ、道から数十メートル程も入った民家の軒先に育つサザンカの古木を確認することができました。


 周囲は闇に包まれていましたから、私一人ではとても探し出すことはできなかった筈です。


 「上下留のサザンカ」の位置を確認し、私は近の空き地に車を停めて朝を待ちました。


 そして驚いたことに、翌朝車の中で目を覚ますと、駐在所隣家の御主人が、温かいいコーヒーとトーストを持って車に朝食を届けて下さったのです。


 愛知県北設楽郡設楽町津具字上下留の派出所のお巡りさんと奥様、そして隣家の佐々木様、その節は本当にご親切をありがとうございました。


 車の中で温かい朝食を頂いて車外に出ると、サザンカが朝陽を浴びながら満面の笑みの花を咲かせていました。

 

 


 

 
 上下留のサザンカは資料によると、


 樹高5.5m、幹周り0.97m、根周り1.5mで1977年12月1日に津具村(現在は設楽町)の指定天然記念物となりました。


 このサザンカの所有者の佐々木のりやす様がご自宅から出てこられ、説明して下さいました。


 この木は、佐々木のりやす様のお祖父さんが、自宅を今の場所へ移した時に植えたもので、その経緯から考え、樹齢は百数十年を超えるだろうとのお話でした。

 

 


  
 毎年11月から12月にかけて花を咲かせ、多くの人の目を楽しませてくれるそうです。

 

 


  
 佐々木様の前庭に、天然記念物に指定されて時に設けられた解説看板を見かけましたが、字は擦れて、読むことはできませんでした。

 



 
 緑深い山郷の中で、冬の陽射しを受けて咲く上下留のサザンカ。


 項に冷気を感じる季節に瞳の奥へ暖かな光を届けてくれた、素敵な古木でした。

 

 そして私は、次の目的地「御作のサザンカ」を目指しました。

 

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日本一のサザンカ寺を目指す豊橋の医王寺 

2019-12-09 20:56:05 | 冬の花 山茶花の旅

 

 2010年の「冬の花 山茶花の旅」に9年ぶりに追記します。

 

 秋に悪化した喘息が回復し始め、今のうちにサザンカ巡りを記録しておこう、という気力が湧いてきましたので、11月に訪ねたサザンカをご紹介することに致します。
 

 先月の11月16日に浜松フラワーパークで日本ツバキサザンカ協会主催の見学会が催され、お誘いを受けましたので、折角浜松まで行くなら、以前から気になっていた近隣のサザンカを見てこようと思い立ちました。
 
 フラワーパークでの見学会が終わった後、その足で豊橋市に車を走らせ、医王寺(サザンカ寺)の樹齢250年と称されるサザンカを訪ねました。

 駐車場に車を停めて本堂へと歩を進めますと、本堂右手に、合掌造りに刈り込まれたサザンカの古木が見えてきました。
 
 

 季節がまだ早いのでしょう、木は僅か数輪の花を見せるのみでした。
 
  

  
 近くに、サザンカ古木の説明が掲げられていました。
 
 

 そこに、
 
 医王寺は1707年の海難にあい、海辺の地から当地に移転してきた。
 
 サザンカは移転後に植樹したと考えられ、「合掌造り」の形となったのは四世道契和尚の頃からで、毎年11中旬からピンクの花を咲かせる。
 
 樹齢約250年、樹高約8メートル、幹の太さ110メートル、
 花の見ごろ11月中旬から12月下旬

 と記されていました。

 ツバキ協会理事の箱田直紀博士の話によれば、このサザンカは品種「桃山」の可能性が高いそうです。
 
 本堂の前庭に多種多様なサザンカの品種が植えられています。
 

 
 先ほど浜松フラワーパークで多くのサザンカ品種を見てきましたので、全ては見ませんでしたが、「三頭咲」の名札を付けた木が花を咲かせていました。

 「三頭咲」は中輪で桃色一重の花を咲かせ、一つの蕾から出る花の花軸が1~3に分かれることで知られます。
 
 また小形、楕円の葉の先端が2~3裂する特徴も示します。

 ドイツの文豪ゲーテが「花は葉が変化したものである」ことを予想し、近年の遺伝子研究でそのことの確かさが確認されています。
 
 この「三頭咲」のように、花軸が途中で分かれることと、葉脈が2~3裂するのも、同じシステムに基づくはずです。
 

 
 
 

花軸が分かれた「三頭咲」 小石川植物園
 

 医王寺は、寺に隣接する場所にサザンカ園が設けられ、そこを含めて寺には全国から集めた175種の2000本のサザンカが植栽されています。
 

 
 ご住職は更に数を増やし、日本一のサザンカ寺にしたいとお話されていました。
 
 サザンカやツバキには、日本人が古くから慈しみ育ててきた園芸種が数多く知られています。
 
 しかし、個人の庭に育つものは、親から子への相続時に庭がマンションや駐車場となって次第に消滅しつつあります
 
 医王寺のようなお寺さんがサザンカの品種を集め育ててくれれば、日本古来の文化財であるサザンカ品種を保存することができます。
 
 私は知る限りの、サザンカ品種収集に関する情報をご住職にお伝えし、夕暮れ迫る医王寺を後に、次の目的地へと車を走らせました。
 
 
 

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