夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『湖の女たち』

2024年05月22日 | 映画(ま行)
『湖の女たち』
監督:大森立嗣
出演:福士蒼汰,松本まりか,福地桃子,近藤芳正,平田満,根岸季衣,菅原大吉,
   土屋希乃,北香那,穂志もえか,奥野瑛太,財前直見,三田佳子,浅野忠信他
 
一日の終わりにはできれば明るい映画を観たいものですが、
この日は終業後に2本ハシゴを決めた時点で暗くなることを覚悟していました。
まずは1本目、イオンシネマ茨木にて。
 
吉田修一の同名小説を大森立嗣監督が映画化。
大森監督作品であっても原作が三浦しをんとかなら若干明るめもあり得るけれど、
吉田修一ならば暗くなること確実です(笑)。
 
滋賀県湖畔の老人介護施設もみじ園で介護士を務める豊田佳代(松本まりか)。
昼夜ぶっ通しで勤務に就いた日の早朝、休憩のために園を出ている間に、
入居者である100歳の男性が急逝する。状況から見て殺人。
捜査を担当するのは西湖署の若手刑事・濱中圭介(福士蒼汰)とベテラン刑事・伊佐美佑(浅野忠信)。
 
もみじ園の職員への取り調べをおこなうことになった濱中は、
伊佐ら上司が犯人と目星をつける職員・松本郁子(財前直見)の自白を得ようと躍起に。
しかし何時間拘束してあの手この手で攻めようが、松本は一向に認めない。
 
実は事件当時に園の外にいたという佳代を湖畔で見かけた濱中。
佳代が何をしていたか知っている濱中は、佳代の隠された感情を引きずり出すと、
彼女への支配欲を募らせ、ふたりは歪んだ関係に陥る。
 
一方、かつて西湖署の汚点となった薬害事件を追う週刊誌記者・池田由季(福地桃子)は、
引退した刑事・河合勇人(平田満)を通じて極秘資料を受け取る。
そこには戦時中におこなわれていたとある実験にまつわる驚愕の事実が隠されており……。
 
大森監督らしい暗さを湛えた作品ですが、ちょっとネタが多すぎてとっちらかった印象。
「女」ではなく「女たち」だからそれぞれの女性の群像劇とも言えるけど、
ひとりひとりのことがよく見えないうえに、みんな中途半端に終わってしまったような。
 
冒頭は佳代の自慰シーンから始まりますから、それなりにショッキング。
たまたまそれを見た圭介は、そのせいで彼女に構おうとします。こうなっちゃう理由も想像におまかせ的。
思春期に母親を亡くして父親の面倒を見続けてきた佳代が女として生きる時期を逸して今に至ったということか。
 
事件の真相は『月』同様に実際の事件を反映。これがとても恐ろしい。
しかし犯人がつかまるわけではないし、薬害事件のほうもどうにもならず、とにかく明るい要素はゼロ。
どれもこれも放り投げられて、観る側は呆然。
ま、好きですけどね、大森監督。こういうのに慣れっこになったかも(笑)。
 
はっきりとした結末がほしい人には不向きな作品。
エロい松本まりかと暴力的で鬱屈した福士蒼汰を見たい人はどうぞ。

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『Ryuichi Sakamoto | Opus』

2024年05月21日 | 映画(ら行)
『Ryuichi Sakamoto | Opus』
監督:空音央
 
109シネマズ大阪エキスポシティにて。
 
昨年3月にこの世を去った坂本龍一。
10年近く前に中咽頭がんであることがわかり、3年前には直腸がんに。
あちこちに転移して手の施しようがなくなり、相当つらかったろうと思われます。
彼が「あと何回満月を見るだろう」とつぶやいていたと聞くと、
 
その年の9月、坂本龍一が最後の力を振り絞って演奏に臨む。
東京のNHK509スタジオで8日間にわたって収録した演奏が本作です。
ただひたすら、ピアノに向かう彼を収めただけといえば収めただけ。
凝った演出はされていないように見えるところが余計に素晴らしい。
 
静謐としか表現できません。
彼の表情は穏やかで、死が近いとは思えない。けれど、それを感じながらの演奏だったのでしょう。
 
彼自身の選曲による20曲。
心地よすぎてたまにうとうとしてしまってごめんなさい。
空の上にいるような気持ちでした。
 
あらためてご冥福をお祈りします。

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『鬼平犯科帳 血闘』

2024年05月20日 | 映画(あ行)
『鬼平犯科帳 血闘』
監督:山下智彦
出演:松本幸四郎,市川染五郎,仙道敦子,中村ゆり,火野正平,本宮泰風,浅利陽介,山田純大,
   久保田悠来,柄本時生,松元ヒロ,中島多羅,志田未来,松本穂香,北村有起哉,中井貴一,柄本明他
 
109シネマズ大阪エキスポシティにて。
 
池波正太郎の生誕100年を記念して製作、まず公開されたのが2部作“仕掛人・藤枝梅安”でした。
同時期に製作が発表されていたのがこの“鬼平犯科帳”で、このたび劇場公開。
同じキャストで今年初めから時代劇専門チャンネルにて放映中のようです。
TV版は未見ゆえ、話がどう繋がっているのかわかりませんが、これのみでじゅうぶん面白い。
監督はTV版と同じく山下智彦が務めています。
 
火付盗賊改方(ひつけとうぞくあらためかた)の頭、長谷川平蔵(松本幸四郎)は、
盗賊たちから「鬼平」と呼ばれて恐れられているが、
このところそんな平蔵に挑むかのように、躊躇せずに人まで殺す盗みが頻発している。
 
いったいどこのどいつがこのような悪事を働く集団を率いているのか。
どう見当をつければよいのか悩んでいた平蔵のもとへ、
20年前によく立ち寄っていた居酒屋の娘おまさ(中村ゆり)がやってくる。
 
平蔵の役に立ちたいと願うおまさは、盗賊を捕まえるために密偵となることを希望。
そんな危ないまねはさせられないと退ける平蔵。
あきらめきれないおまさは、平蔵が鷺原の九平(柄本明)を探していると知るや、
昔の知り合いをたどって九平のもとへと行き着いてみせる。
 
九平も盗賊ではあったが、決して人殺しはしない。
たまたま盗みに入った屋敷で件の一味を見かけ、その残虐さを目の当たりにしていたのだ。
おまさは引き込み女を装うと、九平と協力して一味を挙げようとして……。
 
芸達者がそろうとここまで面白くなるものなのですね。
というのか、そもそも“鬼平犯科帳”が、そして池波正太郎が面白いのか。
 
たぶん私と同世代の人ならばうなずいてくれるでしょうけれど、
松本幸四郎と聞くと、九代目(現・二代目松本白鸚)のほうの顔が即座に浮かびます。
主演ドラマ『王様のレストラン』(1995)なんて超懐かしい。
そして本作の主演である十代目は、私たちにとってはどこまでも市川染五郎
今井美樹主演のTVドラマ『ブランド』(2000)の役がめちゃよかったのですよねぇ。
その染五郎の名前は今はもうさらに息子が襲名し、若かりし頃の平蔵役で出演しています。
 
九平役の柄本明が良いし、敵役を演じる北村有起哉が迫力満点の酷い奴。
彼の情婦で一味を手引きする引き込み女、志田未来があわれ。
また、かつて平蔵が惚れ込んでいたという遊女おろく役の松本穂香、平蔵の妻を演じる仙道敦子も○。
平蔵の同心、木村忠吾役の浅利陽介とのやりとりには笑わされて楽しい。
 
テンポよく、殺陣も見応えあり、飽きずに観られます。
時代劇が苦手だという人にもオススメしたい。
 
ところでこれは何部作ですか。続きバリバリにおわせてます。早く観たい。

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『トラペジウム』

2024年05月19日 | 映画(た行)
『トラペジウム』
監督:篠原正寛
声の出演:結川あさき,羊宮妃那,上田麗奈,相川遥花,木全翔也,久保ユリカ,木野日菜,内村光良他
 
仕事を休んで一日中実家の片付けに費やし、へろへろになって一旦帰宅するも、
なんとなく映画を観る元気は残っていそうな気がして、109シネマズ箕面へ向かいました。
 
原作は元乃木坂46の高山一実の作家デビュー作にしてベストセラーとなった同名小説。
月刊誌『ダ・ヴィンチ』に2016年から2018年にかけて連載されていたそうです。
映像化を手がけたのは“SPY×FAMILY”などのスタジオCloverWorksで、アニプレックスの完全子会社。
 
東(あずま)ゆうは城州東高校に通う女子高生で、本気でアイドルを目指している。
ありとあらゆるオーディションを受けて落ちた過去があることは内緒。
ゆうがひそかに目論んでいるのは、城州市の東西南北の高校に通う美少女をひとりずつ集め、
アイドルグループを結成して売り出すこと。
自身は東高校の美少女だから、南北と西に美少女を見つけようと考える。
 
まず向かった聖南テネリタス女学院で美少女発見。
彼女は華鳥蘭子といい、プール付きの豪邸に暮らす凄いお嬢様だが、テニス部ではその下手さで有名。
東高の制服を着てうろちょろしていたゆうがたまたまテニス部員に目をつけられ、
偵察隊だと間違われたうえに蘭子と対決させられる。
テニスなんてまったくできないゆうは蘭子に負け、蘭子は初の勝利に大喜び。
かくして感謝されたゆうは、蘭子とすぐさま友だちになることに成功する。
 
次に向かったのは西テクノ工業高等専門学校。
在校生のほとんどが男子のなか、ロボコンで優れたロボットを披露する大河くるみは巷の有名人。
最初はややこしいファンと思われて取り付く島もなかったが、
同校に通う写真好きの男子高校生・工藤真司の協力を得たゆうは、くるみとも無事友だちに。
 
ある日、くるみと出かけたゆうは、小学校の同級生だった亀井美嘉と再会。
地味でたいして可愛くもなかった印象は消え去り、くるみが見惚れるほどの美少女になっていた。
聞けば美嘉は城州北高校に通っているというではないか。
これで東西南北を網羅できたとゆうは内心ガッツポーズ。
 
4人で行動する様子をSNSに登校してバズりたい。
美少女ぶりが噂になるよう、美嘉が以前から参加していたボランティア活動に顔を出したり、
地元の観光ガイドを買って出たり、ゆうはデビューに向けて計画を進めるのだが……。
 
ゆう以外は誰もアイドルになりたいなんて思っちゃいないし、ゆうの目論みも知りません。
自分の高校では浮きがちだった彼女たちは、ただ親しい友だちができて嬉しいだけ。
アイドルとしての活動も一緒に楽しんでいたけれど、だんだんゆうのことが怖くなります。
 
アイドルになんてなりたくないと言い出したくるみたちに、
人を笑顔にすることができる素晴らしい職業なのに、なんてことを言うんだと怒るゆう。
だけど目の前にいる仲間たちがゆうに怯え、笑えなくなっています。
 
アイドルって大変な仕事ですね。
売れる前から売れた後のことを考えて、全部計算のうえで行動する。
売れたらすぐに身辺を探られるから、以前はボランティアをしていましたと言えるように、
その言葉に偽りがないように、すべて計算尽く。嫌な子です(笑)。
 
みんなが離れていって落ち込むゆうが「私って嫌な子だよね」と言ったとき、
母親がなんと答えるのかと思っていたら、「そういうところもあるし、そうじゃないところもある」と言う。
「そんなことないわよ」と全否定しないのは逆に好印象でした。
 
アイドルが原作者だということで、高山一実自身がこんな計算だらけだったのかと思われそうなところ、
そんなところもあればそうじゃないところもあるだろうと思えるのでした。
それだけがすべてじゃないよね。

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『不死身ラヴァーズ』

2024年05月18日 | 映画(は行)
『不死身ラヴァーズ』
監督:松居大悟
出演:見上愛,佐藤寛太,落合モトキ,大関れいか,平井珠生,米良まさひろ,
   本折最強さとし,岩本晟夢,青木柚,前田敦子,神野三鈴他
 
イオンシネマ茨木にて2本ハシゴの2本目。
 
原作は2013年から2014年にかけて『別冊少年マガジン』に連載されていた高木ユーナの同名漫画。
監督は、大好きというわけでもないけれど、かなり気になる松居大悟
 
長谷部りの(見上愛)は、入院していた幼少期、もう死ぬと思ったそのときに、
花を持って励ましに来てくれた少年に一目惚れし、以来ずっと彼と再会することを夢見ていた。
 
中学のとき、新入生にまさにその彼・甲野じゅん(佐藤寛太)を見つけて大興奮。
足の速いじゅんを無理やり陸上部のリレー選手に仕立て上げ、ほかの部員も巻き込んで猛練習。
それが実ったときにじゅんに告白して返事をもらった途端、じゅんが消えてしまう。
 
高校に入ると、軽音部でじゅんを見かけてギターの指南を請う。
ところがそのときも両想いになった瞬間、じゅんが消える。
 
その後も車椅子に乗ったじゅんを見かけて告白したり、
クリーニング店のオーナーになっていたじゅんを見かけてそこでバイトを始めたり、
何度もじゅんに再会しては好きだと告白、じゅんからも好きだと言われるのに、
その瞬間にじゅんが消えてしまう。
 
もうじゅんと会っても好きにはならない。
そう思っていたのに、大学でまたじゅんと再会してしまったりの。
しかしじゅんは記憶が一日しか続かない病に罹っていた。
一日しか続かないというのか、正確には、眠ればそれまでの記憶を失くしてしまうじゅん。
りのは毎朝じゅんを迎えに行って一緒に通学。毎日ラブレターを渡すのだが……。
 
『50回目のファーストキス』(2018)と同じ設定ですよね。
また同じネタかぁと思ったものの、両想いになった瞬間に相手が消えてしまうのは面白いじゃあないか。
けれどそのネタ明かしにはちょっと唖然。それって、言い方が悪いけど、単にイタイ女やんか。
 
なんだか拍子抜けしてしまって、どうすればよいのやら(笑)。
ネタバレすると、どのじゅんも消えてしまったわけではなくて、
りのが好きになった相手のことをじゅんだと思い込んでいただけで、
相手は別に消えちゃいないし、りのが記憶を書き換えて消していただけで。
りのの幼なじみの田中(青木紬)はそのことを知っているけど言わない。
 
全然納得が行かないんですけどっ。
あ、ちなみに客は私だけ。今年2度目の“おひとりさま”でした。

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