夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『オープン・ウォーター』

2005年11月28日 | 映画(あ行)
『オープン・ウォーター』(原題:Open Water)
監督:クリス・ケンティス
出演:ブランチャード・ライアン,ダニエル・トラヴィス他

ぐるり360度、海、海、海。
あとは空以外、何も見えない海のド真ん中に
夫婦で放り出されたら?

1998年にオーストラリアのグレートバリアリーフ沖で
実際に起こった事件を基にしています。
夫婦は行方不明のままなので、
本作は「こうなったんとちゃうかな」という推測。
超低予算映画で、CG一切なし。
野生のサメを本当にはべらせての撮影。

ダニエルとスーザンは仕事に追われる若夫婦。
7カ月も前から延期し続けてきた休暇をやっと取り、
カリブ海へダイビングに出かける。

翌朝、ツアーボートに乗り込む。
20名の客を乗せたそのボートは沖へと向かう。
2人ずつ組になり、30分ちょっとのダイビングを
それぞれ楽しむことに。ガイドの説明によれば、
この辺りのサメは人を襲うことはないらしい。
ダニエルとスーザンはようやく仕事のことを忘れ、
水中の美しさを楽しむ。

ところが、人数確認の単純なミスから
ふたりがボートに戻る前に
全員揃ったとガイドが勘違いして出発。
ダニエルとスーザンは海の真ん中に置き去りにされる。
足はもちろん届かない。
叫んでも誰にも聞こえない。さてどうする?

夫婦で置き去りにされるのがミソでしょう。
お互い、ふたり一緒で良かったと最初は思いますが、
途中から痴話喧嘩になってなじり合い。
いつでも集合時間ぎりぎりで
余裕を持たないからこんなことになるんだとか、
ほんとはダイビングよりスキーに行きたかったんだとか、
いま言うてもしゃあないやろってことばかり。
でも、こんな状況に置かれたら、普通ではいられない。
そのイカレた状態や緊張感がピシピシ伝わってきます。

ダニエルがサメの習性や海難事故について
あれやこれやとまくし立てます。
知ってるから助かるのかというと、そうじゃないのも悲惨。
字幕では、テレビ番組で見たので知っているということになっていますが、
実際はディスカバリーチャンネルで見たと言っていて、
ディスカバリー好きなわが家では
そうか、見ててもアカンかと悩みました。

結末はぜひご覧ください。
1998年の事件については、保険金詐欺、あるいは
当時の生活に疲れた夫婦が新生活をスタートするために
念入りに計画した偽装事故だったとの噂があります。
翌日、別のボートの人数が増えていたという情報も。
本当の結末は本人たちしか知り得ません。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『イン・ハー・シューズ』

2005年11月24日 | 映画(あ行)
『イン・ハー・シューズ』(原題:In Her Shoes)
監督:カーティス・ハンソン
出演:キャメロン・ディアス,トニー・コレット,シャーリー・マクレーン他

上映開始時間の20分前に突如観に行こうと思い立ち、
ほぼ起きたままの恰好で車を飛ばしました。
映画館が近所にあるって幸せだけど、
ハンカチを忘れてティッシュで涙をふくはめに。

ローズとマギーは何もかもが正反対の姉妹。
妹のマギーはスタイル抜群の美人で男性関係もド派手。
姉のローズは弁護士として成功しているが、
容姿にはまるで自信なし。ともに未婚。
幼い頃に母を亡くし、現在ローズはひとり暮らし、
マギーは父や継母とともに暮らす。

ある夜、泥酔状態のマギーが継母に追い出されたため、
ローズは仕方なく自分のマンションへマギーを連れ帰る。
文無しのままで居座られては困ると、
ローズからうるさく言われたマギーはなんとか就職。

ところが、ついいつもの男癖が出て、
ローズの恋人ジムまでもベッドに誘ってしまったマギー。
現場を目撃したローズは半狂乱、マギーを放り出す。
行く当てのないマギーは父の抽斗から見つけた手紙を頼りに
母の死亡以来会っていない祖母のエラを訪ねて
フロリダの施設に向かうのだが……。

男くさい作品に定評のある監督ですが、
女性の描き方もうまいです。
キャメロン・ディアス演じるマギーなんて、
最初は女の敵も敵、腹立たしいぐらい。
だけど、ノーテンキに見える彼女が実は読書障害を持ち、
劣等感に押しつぶされそうになっている様子にキュン。
ローズ役のトニー・コレットは『シックス・センス』(1999)で
あの母親役を演じた人で、いつも「参りました」。
姉妹、そして祖母の心の傷に共感を持たされます。

ローズと同僚サイモンの食事のシーンが好きです。
落ち込むローズを寿司屋に誘ったサイモンは
ローズに一切注文をさせず、ひとりで全品注文。
何も決めさせないつもりかとぼやくローズに
「僕は注文の天才なんだ」と。
ローズに最近行ったレストランはどこかと尋ね、
「僕ならそのレストランではこれを頼む」と
細かなメニューを挙げ始めます。その美味しそうな響き!
そして、「僕と一度外食すれば、一生一緒に食事したくなるよ」。
言う人によっては「アホか」と言いたくなりますが、
本作ではとってもいい口説き文句でした。

「自分にぴったりの靴を見つけたとき、その人生は完璧になる」。
これはスペイン作品の『靴に恋して』(2002)の台詞ですが、本当かも。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『モンドヴィーノ』

2005年11月22日 | 映画(ま行)
『モンドヴィーノ』(原題:Mondovino)
監督:ジョナサン・ノシター

キャッチコピーは「誰かに話したくなる、ワインの話」。
関西では先週末に公開されたドキュメンタリー作品で、
ソムリエでもある監督が、ワイン業界の裏側に迫ります。
封切り初日の特典はワインではなく、プーアール茶のティーバッグ。

出演者は多数ですが、ワイン造りに対する考え方で
ほぼふたつに分類することができます。
一方は「ワインのグローバリゼーション」を唱え、
「どこででも売れるワイン」を造ることを第一とする人たち。
もう一方は風土に根ざした「地味」(=テロワール)を重んじる人たち。

前者の代表として、ミシェル・ロランとロバート・パーカー。
ロランは世界を飛び回って大衆の好むワインを生産し、
困窮する造り手には売れるワイン造りをコンサルティング。
パーカーは言わずと知れたワイン評論家。
彼が高得点を与えたワインは凄い売れ行きを見せるため、
彼に評価してもらえるようなワインを目指す造り手も多いそうです。

後者の代表は、エメ・ギベールやド・モンティーユ一族など、
フランスの造り手たち。「テロワール」にこだわって、
大衆に媚びないワインを造り続けます。

意図的になのか、前者を捉えたときのほうが
カメラのぶれが激しかったり、
後者の背景には鳥のさえずりが聞こえていたりするので、
監督自身はテロワール派なのかと思いますが、
さほど作為は感じられず、フェアに描いている気がします。

劇場内に置かれていたリーフレットに、
本作についての放送作家の方のこんなコメントが。
「テーブルワイン1本分のお金を払って、この映画を観る。
たぶん、次から飲むワインの味が変わるでしょう」。
うまいこと言うなぁと思いました。
実際、観賞後におじゃましたお店でタイムリーに
同じブドウのフランスワインとカリフォルニアワインを出してくださいました。
「お、こっちがテロワール、こっちがパーカー好みやな」と考えながら飲むのは幸せ。
でも、どっちもおいしいんだもの。
どっちがいいかなんて決められない。

気になっていることがひとつ。
アルゼンチンの造り手が、痩せた土地で生活のために仕方なく造るワイン。
「なかなかうまく熟成してるだろ」と差しだされたワインを
テイスティングする監督。その表情がビミョーでした。
あれって、首を捻った顔に見えましたけれど、おいしくて唸った顔ですか。
「唸る」と「捻る」ってよく似た字だけど、紙一重!

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

はやりの邦題、なんたらの仕方。

2005年11月16日 | 映画(番外編:映画と邦題・字幕・台詞)

以前、苦労のあとがしのばれる長めの邦題についてこちらに書いたことがあります。
すぐに思いつく邦題のうち、もっとも長いものといえば、
『ウディ・アレンの誰でも知りたがっているくせにちょっと聞きにくい
SEXのすべてについて教えましょう』
(1972)ですが、
最近の流行は、「なんたらの仕方」という長めの邦題。

『幸せになる彼氏の選び方 負け犬な私の恋愛日記』(2002)。
原題はあっさりと、“I'm with Lucy”。
主演のルーシー役のモニカ・ポッターは、
『コン・エアー』(1997)では刑務所帰りのニコラス・ケイジをひたすら待つ妻、
『パッチ・アダムス』(1998)ではロビン・ウィリアムズが想いを寄せる女性、
『ソウ』(2004)では監禁される医師の妻と、
たいてい健気で可憐な女性を演じていますが、
負け犬に扮する本作では、失恋後にブラインド・デートを5回。
そのうちの誰と結婚までこぎつけるかというお話です。

まったく期待せずに観たら、それなりの楽しさ。
異なるタイプの5人に興味を惹かれます。
3年前の作品がいまごろDVD化されたのは、
『モーターサイクル・ダイアリーズ』(2003)のチェ・ゲバラ役で
日本でも知名度が上がった俳優、ガエル・ガルシア・ベルナルが
5人のうちのひとりとして出演しているからでしょう。

メジャー級な作品では『最後の恋のはじめ方』(2005)。
原題は主人公の名前でもある“Hitch”。
モテない男性に意中の女性の射止め方を指南する
デート・ドクターをウィル・スミスが演じます。
とてつもなくわかりやすいラブコメなのに、これまた号泣。
この手の話、絶対嫌いになれません。

フランス映画にも『フレンチなしあわせのみつけ方』(2004)なんて邦題が。
原題も長くて“ils se marie`rent et wurent beaucoup d'enfants”、
直訳すると「彼らは結婚して沢山の子どもを持ちました」。
これはかなり皮肉ったタイトルで、その通りに甘い話とはいきません。
夫の浮気を疑う妻をシャルロット・ゲンズブール。
妻が気づいているとも知らず浮気している夫。
妻の後ろ姿を見て夫が何かを思いだす表情がとても良いです。
ジョニー・デップがちょこっとおいしく登場。

どんな凡作であれ、恋をしている人を見るのは楽しい。
お決まりの展開であっても切なさに胸をしめつけられ、
やはり泣かされてしまいます。恋をしましょう♪


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ベルリン、僕らの革命』

2005年11月12日 | 映画(は行)
『ベルリン、僕らの革命』(原題:Die Fetten Jahre Sind Vorbei)
監督:ハンス・ワインガルトナー
出演:ダニエル・ブリュール,ジュリア・ジェンチ,スタイプ・エルツェッグ,
   ブルクハルト・クラウスナー他

ドイツ東西の統合以来、貧富の差が歴然とし、
社会体制に疑問を持つ若者が抗議行動に出ることも多いそうです。

そんな若者のひとりであるヤンは、
15年来の親友ピーターとともに“Edukators”(=「教育者」でこれが英題)と名乗り、
金持ちの贅沢を戒めるべく、夜ごと高級住宅街へ繰り出す。

警報器の販売を仕事とするピーターにはその解除も朝飯前。
金持ちの留守宅に忍び込むと、家具を積みあげたり、
ステレオを冷蔵庫に入れたり、調度品の配置を瞬く間に変えると、
最後に「贅沢は終わりだ」と記して立ち去る。
物は盗まず、人は傷つけず、金持ちたちに恐怖を感じさせるのが目的。

ピーターの恋人ユールは、家賃を滞納して大家から突然退去を命ぜられる。
旅行中のピーターに代わって、ヤンが引っ越しを手伝う。
ユールは以前に起こした追突事故が原因で、
莫大な借金を抱えていることをヤンに打ち明ける。
保険切れの車を運転中、ハイウェイでベンツのSクラスに追突。
相手に賠償金を少しずつ返済している身であると。

ヤンはユールを励まそうと、マスコミを賑わす「教育者」の正体を明かす。
それを聞いたユールは、事故の相手であるハーデンベルク宅にヤンを案内。
ふたりでソファをプールに投げ込むわ、ワインの瓶を割るわ、好き放題。
すっきりした気分で退却する。

ところが、ユールは携帯を忘れてきたことに気づく。
現場へ戻ってヤンと一緒に携帯を探していると
運悪くハーデンベルクが帰宅。仕方なく彼を拉致、
旅行から帰宅したピーターにも協力を求める。

ハーデンベルクを連れてアルプスの山小屋まで車を走らせた3人は、
解決策を見いだせないまま共同生活を始めるのだが……。

『グッバイ、レーニン!』(2003)もそうでしたが、
東西ドイツの社会的背景について私はあまりに無知で、
本作もただの幼稚で傲慢なガキの振る舞いにしか思えません。
が、無一文に近いユールが追突したのが
年収340万ユーロのハーデンベルクで、
ユールが10万ユーロの損害賠償のために必死で働く姿を見ると、
彼女たちが理不尽に思う心情はわかるような気がして、
イライラする半面、展開には引き込まれます。

ドイツの「重さ」を知りたくなる一作です。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする