夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『梟 フクロウ』

2024年02月29日 | 映画(は行)
『梟 フクロウ』(英題:The Night Owl)
監督:アン・テジン
出演:リュ・ジュンヨル,ユ・ヘジン,チェ・ムソン,チョ・ソンハ,パク・ミョンフン,
   キム・ソンチョル,アン・ウンジン,チョ・ユンソ,イ・チュウォン他
 
前述の『シモキタブレイザー』の後、同じくシネ・リーブル梅田にて。
 
日本史も世界史もほとんど勉強してこなかったので、疎い。
朝鮮史についても当然知らないものの、李氏朝鮮時代の映画などはいつもとても面白い。
本作は朝鮮王朝の史実として残る王子の怪死事件を基にしたフィクションとのこと。
 
李氏朝鮮時代の第16代国王・仁祖の息子・昭顕世子は、妻と共に8年の間、清に人質として囚われていたが、
李朝と清の架け橋となるべく尽力し、清の皇帝からも一目置かれる働きぶりを見せる。
このたび戻ってくることになり、宮廷は喜びに溢れるかと思いきや、仁祖は渋々迎えに出たという態度。
 
そんな宮廷の内医院に鍼医として勤めることになったのは、盲目のギョンス。
故郷に残してきたまだ幼い弟の病を治すには高額の薬が必要で、
金を工面するためにも良い仕事に就きたいと思っていたところ、その機会に恵まれる。
 
長きに渡る清での生活と旅に疲れたのか体調の優れない世子に施術することになったギョンス。
実はギョンスの眼は明るい日中には見えないが、夜になれば見えるという秘密があった。
ふとしたことからそれに気づいた世子は、最初はギョンスに騙されていたと憤るが、
ギョンスの事情を聴くと、その秘密を守ったまま目をかけてくれるようになる。
 
ある日、御医(内医院で最も位が上の医者)から指名されて世子の施術に同行したギョンスは、
御医が世子の毒殺を企てていることを知る。
施術を装って毒を盛る御医の姿を目撃するも、盲目のふりをしている自分は何も言えない。
ギョンスは御医の退出後にもう一度世子の部屋へ忍び込むが、すでに世子は死んでいて……。
 
歴史バカの私についていく自信はなかったけれど、歴史を知らずとも面白いものは面白い。
昼は見えないけど夜目は利く、そう、まるで梟のギョンスの動きにドキドキハラハラ。
 
ネタバレしても差し支えないと思いますが、黒幕は仁祖。
誰が誰の味方で誰を信用してよいのやら。結局誰も信用できません。
ギョンスは自分に親身に接してくれた世子に報いたかっただけなのに、
誰の指示で動いているのかを仁祖は知りたがる。
純粋に誰かを救いたいという気持ちがあることは信じられないのですね。
 
ギョンス役にはリュ・ジュンヨル。今までの役とは全然違って、イメージが変わりました。
また、仁祖役のユ・ヘジンはいつもおちゃらけたところがあるのに、こんな悪い王役とは。
 
非常に面白い作品でした。朝鮮の時代物、好きだな~。

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『シモキタブレイザー』

2024年02月28日 | 映画(さ行)
『シモキタブレイザー』
監督:安藤光造
出演:佐藤嘉寿人,赤名竜乃介,青木謙,兒玉遥,出口亜梨沙,モロ師岡他
 
シネ・リーブル梅田が、最近見たことがないくらいの数の客で溢れかえっている。
何事かと思ったら、本作の前に上映していた東出昌大主演のドキュメンタリー作品を観に来たお客さん。
上映終了後にサイン会があるらしくて、私もナマ東出昌大を見ることができました。
唐田えりかとの不倫騒動で干されたときは、この人、戻ってこられるのだろうかと思いましたが、
騒動の前より後の彼のほうが明らかに役者として良くなった気がします。
見た目が適度に汚くなって(笑)、色気が出てきたとでも言いましょうか。
 
サイン会に並ぶ行列を横目に見ながら、本作上映のシアター4に入場。
劇場HPの上映スケジュールでは作品名が『シモキタブレザー』となっていたことに笑いました。
 
安藤光造監督、知りません。下北沢出身なのだそうです。
役者陣で知っている顔は、チャンス大城とモロ師岡ぐらい。
前者は『水曜日のダウンタウン』や『千原ジュニアの座王』でよく見かけるけれど、映画で観るのは初めて。
 
KEN(佐藤嘉寿人)とSMOKY(赤名竜乃介)は自家栽培する大麻を売って生活していたが、
SMOKYが栽培のために設備投資しすぎるせいで金がない。
 
ある日、愛犬ブービーの様子がおかしいことに気づき、獣医(杉浦文紀)に診てもらう。
ブービーの腹に腫瘍があるらしく、手術には結構金がかかると言われる。
いくら金がなくても、ブービーを死なせるわけにはいかない。なんとかして金を稼がなければ。
 
ふたりは致し方なくネットで見つけた闇バイトに手を出すことに。
組むことになったBUZZ(青木謙)とSNOW(倉冨なおと)とともに指定された宝石店へと向かう。
宝石を盗むついでに、そこに飾られていたレコードも頂戴したKEN。
 
ところが、宝石強盗自体は宝石店オーナーのゴンダ(佐藤タダヤス)が保険金詐欺のために仕組んだことで、
レコードは時価5億円の価値がつくという伝説の「シモキタブレイザー」だった。
まさか自分が雇った若者にそのレコードを盗まれるなどとは思いもしなかったゴンダは慌てて……。
 
学芸会かよと思いながら観ていました。
なんで私はこんな映画を観ているんだろうと思ったのも事実です。
そうなんですけど、なんだか憎めないんですよねぇ。
みんな、特に若い役者が一生懸命なのがわかるから。
 
アホくさと思いながらも最後まで見て、オチに和みました。
おおっ、逮捕されなかったのはそういうことか!と手を打ちたくなり、
それだけでもうどれだけアホくさくても許すと思った。
 
いずれ私がこの映画を劇場で観たことを人に自慢できるようにみんな大きく育ってや〜。

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『ボーはおそれている』

2024年02月27日 | 映画(は行)
『ボーはおそれている』(原題:Beau Is Afraid)
監督:アリ・アスター
出演:ホアキン・フェニックス,パティ・ルポーン,ネイサン・レイン,エイミー・ライアン,パーカー・ポージー,
   スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン,カイリー・ロジャース,ドゥニ・メノーシェ他
 
封切り日のレイトショーを観に109シネマズ箕面へ。
ところが入場のさいに提示したQRコードでキンコンカンコンと鳴ってひっかかる。
なんでや!?と思ったら、日を間違えてオンライン予約してるやん、私。(--;
優しいスタッフの皆さんのおかげで交換してもらう。
でもそう簡単にハイどうぞと交換してくれるわけではないので時間がかかる。
で、本編開始に間に合わなくなり、最初の数分を見逃しました。
 
179分の大長編だから、駐車サービスを3時間までしか受けられないこの劇場で、
本編開始ギリギリに入場しようとしたのがそもそもの間違いなんですけど。(^^;
 
というわけで、私が入場したときはボーが精神科医カウンセリングを受けているシーンでした。
どう見ても精神を病んでいるふうのボーは、心を母親に支配されている様子です。
 
そんなボーが暮らしているのは、暴行が日常茶飯事の街のど真ん中にあるマンション。
建物内に入るときも決死の覚悟。でないと、通りでたむろする人々が侵入しようとするから。
 
翌日はボーの母親モナの誕生日で、飛行機で実家に向かう予定。
ところがその晩、ボーはことりとも音を立てていないのに、隣室の住人が騒音を訴えてくる。
そのせいで明け方まで眠れなったボーは寝坊して慌てる。
急いで支度を済ませて空港に向かおうとするも、忘れ物を思い出して部屋の中に取りに戻っている間に、
玄関脇に置いていたスーツケースと鍵を何者かに持ち去られてしまう。
 
荷物も鍵もなくては出かけられない。詫びの電話をモナに入れるとブチ切れられる。
落ち着かなくて、精神科医に処方された薬を服用しようとすると水がない。
水なしで飲むと死の危険があると聞かされていたものだから、ボーは再び覚悟を決め、水を買いに表へ出る。
その隙に部屋には見知らぬ者たちがなだれ込み、外で夜を明かすことになるボー。
 
ほとぼりが冷めた頃、ぐちゃぐちゃに散らかされた部屋に戻り、航空券の再購入を試みる。
しかしカードが無効になっていて買えない。
モナに事情を説明しようと電話をかけると、母親ではない若い男の声が応答する。
配達員だという彼がモナを訪ねるも返事がなく、ドアを開けてみるとそこには頭のもげた死体があったと。
どうやらシャンデリアが落下してモナの頭を直撃したようだと言う。
 
事態を受け入れられないボーだったが、自分は一人息子。
なんとしてでも実家に帰らねばと、支度を始めるのだが……。
 
退屈はしません。3時間の長尺だというのに、眠くはならない。ただ、変。
 
マンションには毒グモ発生中の貼り紙があり、ボーの部屋に侵入した人がそれに襲われたのか死んでいる。
毒グモから逃げようとした人は浴室の天井に張り付いていて、入浴していたボーの上にその人が落ちてくるんです。
驚いて裸のままマンションから飛び出し、表の通りへ逃げたボーは変質者と間違われ、
警官に銃を向けられたうえに、走ってきた車に撥ねられてしまいます。
 
目覚めるとそこはボーを撥ねた夫婦の家。夫は著名な外科医らしく、ボーを治療してくれたらしい。
一見いい人っぽいけれど、息子を亡くした夫婦はボーをその身代わりにしようとしています。
息子と共に出兵して帰還したもののPTSDに悩まされている男を家に住まわせ、
ボーの面倒まで見ようとしていることに夫婦の娘は納得できず、何かと絡んできます。
 
やがてボーは外科医の家からも逃げ出さざるを得なくなる。
命からがら逃げる途中、助けてくれた女性に連れて行かれたのはまるで『ミッドサマー』のコミュニティ。
 
こうして書いていてもしっちゃかめっちゃかで、面白いというのかワケわからんというのか。
暴力が普通になっている街、戦争によって心に傷を負った人たち、新興宗教のいびつさなどなど、
今の社会の問題があれこれ詰め込まれている作品なのでしょうか。
 
最初の数分を見逃したせいなのか、モナが大会社を一代で築いた富豪だということは知らず。
ボーがようやくたどり着いた実家を見たときは、こんな金持ちだったのかと驚きました。
この実家で起きることがまた変だし、その後の「審判」に至ってはまるで理解できません。
 
絶対、普通の人には勧められない映画です。でも、観た人とは「あれ何!?」と話したくなる。
ホアキン・フェニックスの演技が凄すぎて怖くなる。
こんな映画をつくる監督も、こんな演技をする俳優も、頭の中はどうなっているのかしら。

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『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』

2024年02月26日 | 映画(は行)
『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』(原題:Five Nights at Freddy's)
監督:エマ・タミ
出演:ジョシュ・ハッチャーソン,エリザベス・レイル,パイパー・ルビオ,
   メアリー・スチュアート・マスターソン,マシュー・リラード他
 
イオンシネマ茨木にて。
 
ホラーを観ることもすっかり珍しくなくなりました。
Five Nights at Freddy's”という世界的人気を誇るホラーゲームがあるそうで。
それを基にした実写映画をブラムハウスが企画、このたび叶う。
 
マイクは少年時代に目の前で弟のギャレットをさらわれた過去がある。
しばらく前に母親は亡くなり、それに耐えきれずに父親も失踪。
後に残されたマイクが歳の離れた妹アビーの面倒を見ている。
 
ギャレットの行方はわからないまま。連れ去った犯人の手がかりも皆無。
マイクは自身の記憶をたどるため、連れ去り場面を夢の中で何度も見ることにより、
見落としている証拠はないものかを考え続けている。
そのせいで睡眠は浅く、イライラしがちで、仕事が長続きしない。
 
マイクとアビーの叔母ジェーンは、そんなマイクの養育権を取り上げようとするが、
アビーを心配してのことではなく、補助金目的なのがあきらか。
どうしてもジェーンとは暮らしたくないと言うアビー。
マイクもそうしたいのは山々だが、仕事が決まらなければどうしようもない。
 
そこでキャリアカウンセラーのウィリアムのもとを訪ねて相談すると、
ただひとつだけマイクに紹介できる仕事があると言う。
それは廃墟と化したピザレストラン“Freddy Fazbear's Pizzaria”の警備員
このレストランはもう閉店から長く経つが、所有者が手放そうとせず、
夜間は不法進入等を防ぐために警備員が必要らしい。
 
不気味な職場のうえに給料も安い。それでもアビーを養うためには仕事をしなければ。
マイクは致し方なくシッターにアビーを預けてこの職に就くのだが……。
 
口コミを見ると、全然ホラーじゃない、怖くない、なんだこれは!みたいなものが多いのですが、
私にとってはじゅうぶん怖くて面白かったです(笑)。
 
思いっきりネタばれしちゃいます。
 
キャリアカウンセラーのウィリアムが変態で犯人なんです。
子どもをさらっては中枢神経をいじって記憶をなくし、レストラン内のロボットと同体化させます。
人間サイズの動物のマスコットロボットの中には、実はさらわれた被害者が入っているという、
世にも恐ろしくて不気味な話。しかもウィリアム役がマシュー・リラードだから、さらに不気味。
 
彼の娘で女性警察官のヴァネッサが父親に逆らえずに何かと処理を手伝っている。
話に無理がありすぎるとは思うけれど、ヴァネッサ役のエリザベス・レイルが美人だからいいや(笑)。
アビー役のパイパー・ルビオはとても賢そうな可愛い子。
家族に不幸があったせいで想像上の友だちを作り出していると大人は思っていますが、
彼女が事件解決の鍵になります。
 
“ハンガー・ゲーム”シリーズまではまぁまぁ活躍していたジョシュ・ハッチャーソン
その後すっかり姿を見なくなったなぁと思っていましたが、こんなところで主演。
彼ももう三十路なので、こんな幼いアビーと兄役というのも引っかかるけど、
本作の続編が作られるそうですから、仕事にあぶれることはないですね。
かつて恋愛もののヒロインを演じていたメアリー・スチュアート・マスターソンが
こんな意地悪な叔母さん役だということに驚愕。時の流れを感じる1本でした。

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『ストップ・メイキング・センス』【4Kレストア版】

2024年02月25日 | 映画(さ行)
『ストップ・メイキング・センス』(原題:Stop Making Sense)
監督:ジョナサン・デミ
 
1984年の作品の4Kレストア版が公開されていました。
トーキング・ヘッズの主な活動期間は1970年代後半から1990年代だから、
私は絶対聴いているはずなのですが、思い出せない。
それどころかバンド名のせいで思い出すのはザ・ロマンティックスの“Talking in Your Sleap”ばかりです。
だからスルーするつもりでいたけれど、帰り道に簡単に寄れる劇場ではもうこれしか観るものがなくて。
109シネマズ箕面のIMAXシアターで鑑賞。
 
観た結果、やっぱり私はトーキング・ヘッズをまったくと言っていいほど知りませんでした。
聞き覚えがあったのはトーキング・ヘッズの曲ではなくてトム・トム・クラブの1曲のみ。
トム・トム・クラブって聞いたことあるけど何やったっけと調べたら、
トーキング・ヘッズの女性ベーシストのティナ・ウェイマスとドラマーのクリス・フランツのユニットらしい。
このふたりは夫婦なんですね。これもいま知ったこと。
 
トーキング・ヘッズのボーカリストでカリスマ的人気を誇るデヴィッド・バーン
彼がギターを弾きながら踊り歌う姿を見て、どうして私はハマらなかったのかを考えていました。
世代的に私が洋楽にハマるより少し前だったからなのか。
ドンピシャの時代ならばラジオやテレビでかかりまくっているうちに馴染んだかもしれません。
 
字幕で歌詞を見ていると、とてもメッセージ性が高い。
振り返ってみると、洋楽を聴き倒した時代も私はメッセージ性の高いシンガーやバンドの曲には
あまり惹かれなかったような気がします。
たとえばU2は世の中の人気ほどは興味を持てなかったし、ブルース・スプリングスティーンもそう。
後者に関しては『カセットテープ・ダイアリーズ』(2019)を観てようやくその良さがわかったぐらい。
 
トーキング・ヘッズの曲に「時の流れに身を任せろ」とかいう歌詞が字幕にあるのを見たとき、
テレサ・テンのほうが好きだなぁと思った私を許してください。

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