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"the" sleeping beauty




ロイヤル・バレエの「眠れる森の美女」、前回のシーズンでは負傷したナタリア・オシポヴァ(Natalia Osipova)のオーロラ姫が見られなかった。

ナタリア・オシポヴァのオーロラ姫を待ち続けたわたしの気持ちは、オーロラ姫の誕生を待ちわびた国王夫妻や彼の民の気持ちに重なるだろう!


もうほんとうに、これ以上はありえないだろうというほどのすばらしい、いや、オーロラ姫そのもののオーロラ姫だった!


16歳の誕生日を迎えるシーンでは、彼女が舞台に登場するなり、世界がオーロラ(光)で満たされたかと思うほど。

守護妖精らによって蝶よ花よと大切に育てられた、美しく優雅で天真爛漫、16歳の生命力にあふれた姫が完璧に表現されて圧巻だった。

これまで「眠れる森の美女」は何十回も見たが、宝石のように発光するこれ以上のオーロラ姫を見たことがない。


王子を夢の中で、自分が眠る城へと誘うシーンでのオーロラ姫は、うってかわって限りない透明感と高貴さが体現され、王子がいとも簡単に「眠れる美女を救出に行く」という冒険を受け入れるのも納得。


3幕の結婚式のシーンでは、オーロラ姫のパートナーのサポートがいまひとつだったのが残念だったが(ロイヤル・バレエはおそらく現在進行中で男性プリンシパル育成中なのである)、ソロのシーンは言葉が見つからないほど美しかった。


また、この光あふるるオーロラ姫を見て、オーロラ姫はやはり「豊穣の女神デメテルの娘にして冥界の神ハデスの花嫁であるペルセポネ」的な人物であると確信した。

国中の民や妖精にまで待望されたオーロラ姫が誕生し、16歳で光そのものの存在となり、国は隅々まで歓喜で満たされる。が、彼女が長い眠りにつくことによって国は停滞し「死ぬ」。やがて王子によってオーロラ姫が目覚めると、国は再び活気に満ちるのである。
光と闇、春と冬せめぎあいは自然の摂理であり、人間は春を待ちわび、春はいっとき冬に脅かされるが、いずれは冬を倒す。オーロラ姫の人生は、春の活気と冬の不毛そのものにあてはまる。


ここまで人を幸せにする総合芸術が他にあるだろうか。
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最後の週末




昨日は春一番かという大風の1日だった。

引越し準備に「春一番」よりもふさわしい天気はないでしょう。


この風で、庭にたまりにたまった落ち葉が一箇所に吹き寄せられたら掃除が楽でいいのに...と、2階の窓まで舞い上がる落ち葉を眺めながらタメイキ。



ベルギーから英国へ、夫の仕事の都合で転居したのは2011年の初秋だった。

転居を娘の中学校入学に合わせたかったため、何もかも即決しなければならず、急に決めた家は当然気に入らず、最初は2、3ヶ月だけ住むつもりだった。
が、結局5年半も住んでしまった。

というのは、次々に、ドイツに行くか米国に行くかという話が出てきては消え、消えては出てきし、それなら英国内で完全に落ち着いてしまうのも無駄か...と無精をしたからだ。

結局、去年の夏、しばらく英国から出ないとはっきりと分かり、近所での引越しを決めた次第。近所も近所、同じ町内での引越し。



来週のお雛祭りは新居で行うつもり。
ちらし寿司の素、ハマグリの真空パック、菱餅、雛あられ、白酒など一通りを日本から送ってもらったので、新居ではさっそくお雛さんだけは出して、花くらいは買いに行って、お祝いしよう。



引越し、うちは食器や置物、額縁、インテリア雑貨が多い、とは分かっていたが、やっぱり...

ワイングラスを薄紙でひとつひとつ巻いていると、洗濯カゴにでもバサバサ入れて徒歩で持って行った方が安全で早いかも! と思いました。
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引越し準備で発掘・洗礼式のドレス








娘の生後3ヶ月の洗礼式のために用意したI Pinco Pallinoのドレス。

同じレース素材のボンネットが付いている。

こんなボンネットが似合うのは赤ん坊か
歴史劇のイザベル・アジャーニくらいでしょうよ。


ドレスは後ろで白いベルベットの長いリボンを結ぶデザインで、
砂糖菓子のようにかわいらしい。

セレモニー用の服は(普通の服も劇的にかわいいが)
伊のイ・ピンコ・パリノ、仏のボン・ポワンが横綱だと思う。


クリーニングに出したのにもかかわらず、
白いベルベットのトリミングだけが経年劣化か黄ばんできているので、
残念ながら孫には着せられないだろうが、

セレモニーで着た服はどうしても処分できない。

娘の洗礼式の写真をこのドレスと一緒に孫に見せてやるのが目下の楽しみ。
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maurizio pollini to celebrate his 75th birthday




ひとことで言うと、

いたたまれなかった...


わたしはただのクラシック音楽好きで、理論構築的な審美耳は全く持っていないが、それでも、やんやの歓声に違和感を感じるほどだった。

いや、歓声があってありがたかったのだ。あれがなかったら気まずさに耐えられず、逃げ出していたに違いない。

実際、インターバルの時に帰ろうかと思ったほどだった(結局帰らなくてよかった。後半のドビュッシーのプレリュード第2巻は、やはりどんなに優れた講義を何時間を受けるよりも勉強になったと言わざるをえなかったから)。


ポリーニの演奏から、いい意味で「機械的」とさえ評された人間超えクオリティが消えたと言われてからもう何十年も経つと思うが、彼の特徴である早さに、身体機能がついていけず、「早さ」ではなく、「前のめりで転びそう」。

最初のショパンの2つのノクターン(Op.27)を聞いている時は、冷や汗が出そうになった。

特に、彼が歌いながら弾く様子が、「気の毒さ」を助長し、エイジズム的ななことは決して言いたくないのだが、「おじいちゃん、もういいから、あなたはかつて素晴らしかったのだから」と思ったほどだった。

バラード3番でもちなおし、4番はまた前のめり、子守唄はすばらしく、スケルツォ1番...

しかしもちろん各所に何かが降りてきているのかというような輝きはあり、アルページオの正確さと繊細さにドキッとなり、という場面も。


娘は、「事実とは全く違うと思うけど、(ショパンは)まるで何十年も前に暗譜した曲を、それ以来一度も楽譜を見ることなしに弾き続けた人の演奏であるかのよう」と表現した。
ポリーニといえば、技術的に難しいと思ったことは一度もないという逸話が有名で、毎日の練習では、当然作曲家の意図を汲むための練習をしているそうだから、つじつまの合わないことである。


後半のドビュッシーから、アンコール3曲(最後はバラード1番で、最後にあれを演奏し尽くすというのはやっぱりすごい)は乗ってきた感じで、ドビュッシーはむしろ若々しく、驚いた。
去年、日本へもツアーで行ったとおっしゃるから驚きの精神力と体力である。


後半は安心して聞けたが、ほんと、ヒヤヒヤしましたよ。
娘が公の場で弾く時は、今でもドキドキして倒れそうになるわたしだが、そんな感じ(笑)。プロがそんなことを観客に心配させてはいけない。
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perahia plays beethoven




ペライヤによるベートベンのピアノ協奏曲シリーズ2回目をバービカンで鑑賞した。

昨夜は2番と4番を、Academy of St Martin in the Fieldオーケストラとともに。
前回11月は1番と3番、次回4月は5番の演奏という趣向だ。


特に4番の素晴らしさ(わたしはもともと3番と4番が好き)は...息ができなかったほどだった、と胸に手を当ててため息をついてみせるしか伝える方法がない。
4番のありえないほどの美を余すことなく隅々まで表現した演奏は、今まで鑑賞した中で一番よかった!


ペライアは、わたしのシロウト意見では、前も書いたが、まず、導入がめちゃくちゃうまいと感じる。
これはピアノの演奏を担当しながらオーケストラの指揮をしていても同じだ。
例えば娘のピアノの先生が「今までなかったものが、まるでそもそもそこにあったように弾くべし」と、レッスン中におっしゃったと又聞きしたが、まさにそのものである。


そしてものすごく、人を招くような演奏をすると思う...

先日、ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・ミュージックのピアノ科の教頭に話を聞いたことを思い出した。
いわく、彼はさまざまなコンクールで審査員をすることが多い。ピアノの審査はプロなので問題なかろうが、多様な楽器が混合したコンクールの審査はどのように判断を下すのかよく質問されると前置きし、「それは奏者がいかに観衆に音楽を差し伸べて、いかにつながろうとしているかという点を評価するにつきます」とおっしゃった。
その点だけを考えても、やはりペライアは超絶的な才能を持っていると感じるのだ。



次の5番も一家で楽しみにしている一方、今夜はポリーニがサウス・バンクでショパンとドビュッシーのリサイタルをするのだ。
演目の中に娘が練習中の曲が3曲もあり、それでなくても見逃せないのに行かない手はあるまい。今朝から、いや、昨夜からもうずっとウキウキなのです...


人生は時々「生きる価値がない」ほど辛い。
しかし、世界には音楽があり、子供の笑い声や夕焼けもあるのだ。

(上の写真、"The soul can be dark and in hell with the darkest forces affecting it and still music can lift it up and somehow release it" とインタビューの一部が抜粋されている)
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