青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

今なお現役、全編成。

2023年06月05日 17時00分00秒 | 富山地方鉄道

(使われてるものいないもの@14760形車内)

今では定期列車で設定がないものも色々と入っている、14760形の方向幕。昔は本宮行きとか有峰口行きが定期の設定であったらしく、そういう写真を見た事もある。越中荏原幕とかね。平成の中期ごろまでは、朝のラッシュ時に2連+2連の4連を組んだ越中荏原行きが平日のみ朝8時台に設定されていて、電鉄富山→越中荏原→速攻折り返して電鉄富山という運用があったそうな。富山口の朝の通勤ラッシュ対応ダイヤ、ということだったのだろうけども、往時はそれだけの需要があったのだな・・・という話な訳で。現状、浦山発の列車はあるけど、浦山行きはないな、とか、「魚津」幕ってそもそも地鉄の駅名は新魚津では・・・?とか、見ているだけで色々と話が膨らんでしまうのが方向幕というものである。

転換クロスシートが並ぶ、端正な14760形の車内。昼下がりの立山行き。地鉄の電車、基本的にはワンマン運転で、無人駅では全開扉をしない。いきおい乗客は前の車両に集中してしまうのだけど、それにしても観光客の乗らない時間は五百石を過ぎた辺りから後ろの車両はガラガラ。まだまだ需要は戻り切っていないという事なのか、それともコロナ禍の間に乗客の散逸が起こってしまったのか・・・

60形と言えば側面に拡がる田窓の連なり。あ、「田窓」というのは、文字通り田んぼの田の字になった形の窓。今の電車って基本的に窓開きませんけど、よく考えたらこの両サイド下部にカニバサミのような蝶番のある電車の窓って貴重かもしれませんね。子供の頃、電車の窓を開けたくても、何でだかなかなか立て付けの悪い電車の窓は子供の力では開けるのが難しく、「開けて」と親にねだっては「ダメよ」なんてすげなく断られた経験をした同年輩の方は多いのではないかと。

昭和50年代の中盤に製造された14760形。今のところは最後の富山地鉄の自社発注車両(軌道線除く)。日本車輛にて製造された2両ユニット7編成14両は、製造当初からの冷房完備。HSC-D電磁直通ブレーキを装備したカルダン駆動の新車として、その画期的な装備とデザインから昭和55年鉄道友の会のローレル賞を受賞。増結用のクハ175も製造され、文字通り富山地鉄の顔として活躍して来ましたが、既にデビュー40年を超えており、車歴としてはそれなりの年月が流れています。

宇奈月温泉開湯100周年記念HMを掲示した60形。春夏秋冬の富山の季節を駆け抜けて早や半世紀弱。歴戦の強者として、渋みを増したいい顔になって来た。正直、10020形が引退し、14720形も引退した今、この顔が「地鉄らしさ」を今に伝える最後の砦だと思っている。幸いにして、未だに7編成全てが現役で稼働しており、まだまだ楽しませてくれそうなのは救いではあるのだが・・・


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1 コメント

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Unknown (風旅記)
2024-04-01 21:51:24
こんばんは。
お写真を拝見し改めて良さを感じています。
転換クロスシートの並ぶ2扉の車両、正統派の良さのようなものが今でも伝わってきますね。
デビューの頃には、大きな前面窓もあり垢抜けたデザインに映ったのではないでしょうか。
大手私鉄から移ってきた車両が懐古の目の人気を集めることもありますが、富山地鉄の歴史を作ってきた代表選手としての風格のようなものが感じられます。
風旅記: https://kazetabiki.blog.fc2.com

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