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■第62回日本水彩画会北海道支部展 (2022年4月19~24日、札幌)

2022年04月25日 10時07分00秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 水彩画だけの団体公募展としては最も伝統の古い「日水」こと日本水彩画会。
 その支部展も今年で62回目で、道内では屈指の歴史を誇ります。

 4年前の2018年に見たときに、世代交代が起きてベテラン勢が少なくなったことに言及しましたが、その傾向はさらに進んでいます。
 ベテランの減少は多くの団体公募展に共通する傾向ですが、新顔が多く加入しているのは、北海道の日水の特徴でしょう。

 会場には、会員、会友、一般が交じって展示しており、プリントにはその区別が明記されていますが、作品票には記されていません。
 写実的な傾向が強いですが、すべての絵がそうだということではないようです。

 小谷良さんも単なる写実の枠にとどまらない画風を模索しているように思えます。地面に散り敷いた紅葉などをモティーフに、琳派を想起させる華やかなデザイン感覚にあふれた「美術館の庭」もそうだし、遠景の木々が記号のように処理された「春のコンポジション」もそうです。
 また、支部長の寺井さんは、装飾的・文様的な細かい筆致が全面にあふれ、2匹のこいのぼりがS字型に排されて安定した構図をつくっています。地平線のような線や、白と紫のライラックが、画面空間全体に広がりを与えています。

 工藤幸俊さんの絵は初めて見ました。
 シャッタースピード遅めの写真のように、とっぷりとした水面の描写が巧みで、揺れるさざ波、浅い水底に沈む落ち葉なども的確に描き分けています。

 岡本善信さん「風待ちの丘」は、ふるえる筆触から、広がりある風景に出合えたときの感動が伝わってくるような、はるばるとした丘や谷間を描いた風景画。
 近景にルピナスの花々、遠景に防風林のある十勝? の大平原を描いた枝島和加子さんの絵にも、似たような心持ちが感じられます。

 関興一さんは、バルビゾン派をほうふつとさせる、濃淡の緑色の饗宴。
 久野さん「早春 2」は、雪解けで水浸しになった林がモティーフで、ミズバショウがちらほらと顔を出しています。枯れ枝など、けっして美しくはない部分も含めて、春のはじめの森林の様相を注意深く観察する目が光ります。

 三留さんは小樽のベテランで、れんがの壁に、昔の小樽運河を描いた絵が貼ってあるような、画中画の世界。
 中井戸さんは異色の抽象画で、全体がほとんど茶やベージュなどが覆われています。マチエールも変化に富んでいます。
 


 会員
寺井宣子  北の春(60号)
三留市子  運河慕情(60号)
中井戸紀子 情景(60号)
三井幸子  ホップとSAPPORO BEER(60号)
西江恭子  花の使者・北へ(40号)彼方に見えるものは…(15号)

 会友
森井光恵  北国の館にて(60号)
桂島和香子 大地に咲く花(20号)
川端良子  待春(50号)
舎川栄子  古いミシンと藍染(40号)
竹山幹子  10月のアジサイ(40号)
久野省司  早春(60号)  早春 2(80号)

 一般
武田美佐江 さあ、行こう(50号)
田中町子  踊り子(50号)
河合幹夫  夕日の湿原(50号)  サイロのある風景(50号)
八幡郁子  懐古(40号)
砂山信一  穀倉の大地(50号) 春が来た!(30号)
関 興一  秋の気配(50号)
佐々木恵子 野葉たち(50号)
岡本善信  風待ちの丘(50号)  早春(50号)
小谷 良  春のコンポジション(50号) 美術館の庭(20号)
渋江君子  緑風(50号)
益満伸子  堂々の夕張岳(50号)
窪田敏子  モーニング(40号)
宮本重範  北の恵み(50号)
工藤幸俊  秋水の彩り (50号) 早緑の水草(50号)



2022年4月19日(火)~24日(日)午前10時(初日は正午)~午後5時
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)


過去の関連記事へのリンク(いずれも画像なし)
第59回日本水彩画会北海道支部展 (2018)

第57回日本水彩画会 北海道支部展(2016)

日本水彩画会北海道支部50周年記念展 (2010)

第49回日本水彩画会北海道支部展(2008年)
第48回(2007)
第46回(2005)
2003年(7月19日の項)
01年(21日の項)


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