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■Rebirth -永遠に変わらないもの- 猪子珠寧メモリアル写真展 (2022年11月21~27日、札幌)

2022年11月26日 08時38分10秒 | 展覧会の紹介-写真
 会場中央のテーブルに、ライカのレンジファインダーカメラが2台載っていた。
 ライカは35ミリフィルムカメラを初めて実用化したドイツのメーカー。レンジファインダーは、一眼レフの一世代前のタイプで、ファインダーをのぞいても写したときの画角のとおりにはならない。
 筆者はよく分からないのだが、そのうち1台には古いニッコール(ニコン製)のレンズが装着されていた。ライカとニッコールのマウントが合うなんて、知らなかった。
 これが生前、ピントあわせに苦労しながら、肌身離さず使っていた愛機なのかと思うと、胸が熱くなった。
 筆者も初めて使ったカメラは、ピントあわせはマニュアルだった。
 オートフォーカスになれてしまうと、マニュアルのピントあわせはたいへん難しく感じられる。
 フィルムの巻き上げなどもすべて手で行う。

 そのまわりの壁には自らの手で焼いたプリントがびっしりと貼り付けられている。
 ライカのまわりには、彼女が撮った友人の結婚式のフォトブックが何冊か。
 ベタ焼きや、2018年のモノクロフィルム写真のグループ展の小冊子なども置いてあった。
 入院中に編んでいた手編みもあった。これは、何に仕上げるつもりだったんだろう。

The Rose - Bette Midler (歌詞字幕)English & Japanese Lyrics


 猪子珠寧いのこ じゅねいさんは2020年、乳がんとの闘病の末に亡くなった。
 40歳だった。

 友人たちが遺作展を企画したが、新型コロナウイルスの感染拡大などを受けて、1年延期になっていたという。

 受付には故人のお母様がいらして、来客に応対していた。
 入り口には、HOKKAIDO PHOTO FESTA 代表の大橋さんの追悼文が掛けられていた。彼女がフォトフェスタにもかかわっていたとは知らなかった。
 グループ展や個展を含めて、ほんとうに精力的に活動していたんだと、あらためて思う。

 会場では、彼女の手書き原稿をプリントした小冊子が千円で販売されていた。
 知人が作ったというコーヒー「ジュネイブレンド」付きだ。


 これ以上何を書こうとしても、感傷的な繰り言になってしまうだろうから、このあたりで擱筆する。
 ただ、たしかなことは、人間の命よりも、写真は(あるいは作品は)もう少し長く生きのびることができる。
 だから、多くの人が心血をそそいで作品をつくるのだと思う。

 いまは、彼女が好きだったというベット・ミドラーの「ローズ」を聴きながら、彼女が個展をひらいた、今は無い「ペコラネラギャラリー」のたたずまいを静かに思い出すことにする。
 


2022年11月21日(月)~27日(日)午前10時~午後6時(初日正午から公開搬入、最終日午後3時まで)
らいらっく・ぎゃらりい (札幌市中央区大通西4 北海道銀行本店ビル)

□The Rose 猪子珠寧写真展のサイト https://junei-rose-sapporotenten.localinfo.jp/

□Instagram https://www.instagram.com/juneiinoko/?hl=ja


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