北海道美術ネット別館

アート、写真、書など展覧会の情報や紹介、批評、日記etc。毎日更新しています

■アール・ブリュット/交差する魂 (2月17日で終了)

2008年02月28日 22時27分51秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 展覧会の正式名称は

アール・ブリュット/交差する魂 ローザンヌ アール・ブリュット・コレクションと日本のアウトサイダー・アート

です。
 旭川での展示はもう終わりましたが、これから東京などに巡回します。
 必見の展覧会だと思います。

 さいわい、図録は一般書店でも入手できます。
 さらに、光文社新書「アウトサイダー・アート」(服部正著)という、とてもわかりやすくてためになる本があり、格好の入門書です。

 アール・ブリュット(生の芸術)の定義などについては、リンク先を参考にしてください。

 ただ、会場で、どっかの人が海外の視察者に
「なまの芸術といわれています」
と説明している場面に遭遇し、ずっこけそうになりました。
 これは
「きの芸術」
と読んでください。

 筆者が行ったのは最終日ということもあって、けっこうな観覧者がいました。特別展示室がほとんどだれもいなかったのと対照的でした。

 アウトサイダーアートの魅力というのは、既存の芸術のものさしでははかれないところにあると思います。
 誤解のないように願いたいのですが、アウトサイダーアートの作者に精神を病む人が多いのは事実であるとしても、精神を病む人のアートがアウトサイダーアートというふうに定義づけられるわけではありません。そして、精神を病む人のアートがすべて魅力的だというわけでもありません。アウトサイダーアートのなかにも、おもしろい作品とつまらない作品があるようです。
 この展覧会にはおもしろいアウトサイダーアートが集まっていました。

 なかでも、すでに澁澤龍彦によって日本に紹介されていたアドルフ・ヴェルフリなどは
「おー、本物だ!」
という感じで、とても興味深く見ることができました。

 筆者のごときオタクの目からすると、末岡秀則「電車」もすごいものがあります。
 ものすごい細かさで電車の正面の顔をならべて描いています。いずれも、かなり縦に引き延ばされているのが、ふしぎなところです。
 展示されていた8枚の紙にかかれていたのをかぞえたら、計3777輛!
 しかも、少なくても筆者が見た限りではすべて電車と電気機関車でした。つまり、新幹線や「ライラック」はあっても、ディーゼルカーの「北斗」や「オホーツク」は描かれていないのです。

 喜舎場盛也の漢字をびっしりと書いた作品もおどろきでした。
 一般的な漢字にまじって中国の略体字もずいぶん含まれています。
 意味を捨象してひたすら文字を何千個もつらねていく様子は、どんな書もかなわぬほどラジカルです。

 青い色が美しいなあと思ったのは坂上チユキの「EDEN」。
 前出の「アウトサイダーアート」によると、鉱石なども交えて描いているそうです。
 図録に書かれた自筆の略歴がまたふるっています。たしかに、細胞単位でみると、わたしたちは5億9000万年前の生まれなのかもしれません。

この項つづく)  


2008年1月16日(水)-2月17日(日)
道立旭川美術館(旭川市常磐公園)
2月28日-5月11日 ボーダレス・アートミュージアムNO-MA、旧吉田邸(滋賀)
5月24日-7月20日 松下電工汐留ミュージアム


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。