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■菱谷良一百歳記念作品展 (2021年11月2~7日、旭川) 晩秋の旭川・その2

2021年11月30日 08時01分40秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
(承前)

 菱谷良一さんについては、新聞やテレビなどに登場していますし、このブログでも何度か書いているのでご存じのかたも多いでしょう。筆者が訪れたときも、どこかのテレビ局が取材に来ていて、自画像が並んでいる一角に据えたいすにすわった菱谷さんがカメラに向かって、アナウンサーの問いにはきはきと答えていました。100歳とは思えぬ元気さなのは慶賀すべきでしょうが、できれば、別の場所か、開場前の時間かに収録してほしかったです。まあ、すぐに終わって自画像を鑑賞できたから、けちを付けるほどの話でもないのですが。

 経歴からすれば、政治的な絵があると思う人もいるかもしれませんが、それはまったく見当外れ。
 もともと菱谷さんはまったくのぬれぎぬで、治安維持法違反の罪をでっち上げられた人です。
 菱谷さんは戦前に学生時代を過ごしましたが、すでに社会主義や共産主義への激しい弾圧はあらかた終わっており、共産主義に走るきっかけもなければ、本も入手できない時代になっていました。
 会場に並んでいるのは、穏やかな写実の風景や静物の絵です。
 欧洲や重慶など海外の風景がかなり多いほか、石狩浜の廃船や、厚田・浜益方面の番屋、富良野など、道内もかなりあちこちを回っています。

 個人的に着目したのは、旭川の古い家などを描いた油彩や版画です。
 実は旭川は、昔ながらの建物が、彫刻美術館のような有名なもの以外にも相当たくさんあり、街を歩く楽しさは小樽や函館に匹敵すると思っているのですが、残念ながらほとんど知られていません。
 それらの無名の古建築のスケッチが絵はがきになっていたので、思わず購入しました。他に、画集も買いました。

 これからもお元気で健筆をふるってほしいとねがっています。

 
 北海道新聞2012年11月3日朝刊社会面から引用します( https://www.hokkaido-np.co.jp/article/607409 )。

 【旭川】戦時下に治安維持法で道内の美術部学生らが弾圧された「生活図画事件」で、逮捕・投獄された菱谷良一さん(99)=旭川市=の個展が2日、旭川市民文化会館で始まった。14日で100歳になるのを記念し、友人が実行委をつくって開催した。菱谷さんは「絵は私の自由を奪ったが、私の生きる支えにもなった」と自らの歩みと作品を振り返った。

 菱谷さんは19歳の時に描いた日常生活の絵が共産主義を広めているとして逮捕され、1年3カ月にわたり投獄生活を送った。その後は創作活動から離れたが、退職を機に60歳で再び絵筆を執り、精力的に描き続けている。

 会場には油絵や版画など100点超が並ぶ。95歳まで海外にデッサン旅行に出掛け、会場にはイタリアや米国の風景画や自画像も展示されている。菱谷さんは「自分の足跡を振り返ることができ、とてもうれしい」と感謝した。


2021年11月2日(火)~7日(日)午前10時~午後6時(最終日~3時)
旭川市民文化会館(7の9)

過去の関連記事へのリンク
【告知】松本五郎・菱谷良一 無二の親友展(2019)

戦前の「生活図画事件」で投獄された旭川の菱谷さんが個展 (2014)

第14回えべつ平和を語るつどい「戦争中こんな絵を描いて捕らわれた 生活図画事件犠牲者の証言」 (2009)



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