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■建築家 田上義也のスケッチ展 (2016年4月2~17日、札幌)

2016年04月13日 01時11分11秒 | 音楽、舞台、映画、建築など
 ギャラリー創は建築家がオーナーであるだけに建築をテーマとした企画展をたびたび開いています。
 今回は、北海道の建築家の草分け、田上義也たのうえよし や の、遺族から借り受けたスケッチ帳がテーマ。かなりのページをカラーコピーしており、それらは自由に見ることができます。

 田上義也(1899~1991)は、著名な建築家フランク・ロイド・ライトに師事して帝国ホテル(東京)の設計に携わりますが、ホテル落成の日に、関東大震災(1923)に見舞われ、バイオリンを手に北海道へと渡ります(谷崎潤一郎や岸田劉生ら、震災を機に関西へ移転した文化人は多いのに、田上さん! YOUは何しに北海道に? と思いますよね)。

 田上は来道と同時に、道東北や千島にも旅しています。
 今回は、大震災の被害状況や、列車の車窓から見た道東北の風景(車内の人物を含む)のスケッチが多く見られます。
 「留萌」「豊頃」といったただし書きのあるスケッチは、走りがきなので、それほど顕著な絵画的、建築的な興味を抱けるわけでは、正直なところ、ありません。

 個人的に驚いたのは、関東大震災のスケッチです。上野の山から燃える家並みを見たり、赤坂見附で倒れる神馬を、一部着彩して描いているのですが、作品から受ける印象が、宮崎駿氏の長編アニメーション「風立ちぬ」のそれと、よく似ているように思われるのです。

 筆者がもともと関東大震災について抱いていたイメージ(映像的印象)は、教科書や歴史の本に載っていた、不鮮明なモノクロ写真に負う部分が大きいです。
 だから「風立ちぬ」を見たときは、海の波のようにうねる屋根の列や、上野でごった返す被災者など、鮮明なイメージの連続に、意外な感に打たれるとともに、「さすが宮崎駿」という感想を抱いたものです。
 「風立ちぬ」制作にあたって田上義也のスケッチを参照したとは思われないので、宮崎駿のイマジネーションの力に、あらためて脱帽しました。あるいは、田上のスケッチ力と観察眼の確かさをほめるべきなのかもしれませんが。

 もう一つ驚いたのは、田上義也の精力的な仕事ぶりです。

 彼の名前が新聞などに載るときは、坂牛邸などの古い家や道内各地のユースホステルについての記事のときがほとんどですが、略年表が会場にあり、それを見ると、手がけた建物があるわあるわ。
 札幌市教育文化会館や彫刻美術館、北1条の教会、後志管内岩内町のうきよ、北海道銀行本店などは知っていましたが、カナリヤ(南1西2の布を売る店)や渡島管内八雲町役場は、知らなかったなあ。


2016年4月2日(土)~17日(日)午前11時~午後6時(最終日~5時)、火休み
GALLERY 創(札幌市中央区南9西6)

16日(土)午後4時からギャラリートーク:角幸博、田上茂の両氏





・市電「山鼻9条」から約110メートル、徒歩2分
・地下鉄南北線「中島公園」から約350メートル、徒歩5分

・ジェイアール北海道バス山鼻環状線「南9条西7丁目」から約180メートル、徒歩3分
・中央バス西岡平岸線「中島公園入口」から約670メートル、徒歩7分
・じょうてつバス「南9条西11丁目」から約750メートル、徒歩9分

・トオンカフェから約500メートル、徒歩7分ぐらい


関連記事へのリンク
早春の網走へ オホーツクところどころ(14)=田上義也の代表作、網走市立郷土博物館の外観写真が載っています

井内佳津恵「田上義也と札幌モダン 若き建築家の交友の軌跡」(北海道新聞社 ミュージアム新書) =本の紹介のページです


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