草刈喜一郎さんは江別在住の示現会会員。
以前は炭鉱マンで、炭鉱跡に取材した作品を多く描いてきました。
このほど家族のいる帯広に転居するため、アトリエにたくさんある作品を処分するため、「最後の個展」と銘打って絵画展を開くことになりました。
2001年のギャラリー大通美術館での個展では出品作の大半が炭鉱を描いた作品でしたが、今回は、近年何度も行っている欧洲、道内の風景や、静物画などの小品が多く、リラックスした雰囲気の会場になっているようです。
冒頭の画像では、右下の「夕暮れ(函館にて)」が、なにやらいい感じです(2009年、F3)。
薄紫に染まった夕空に電信柱が林立するさまは、どこかしらなつかしいです。画面の下方には、古い木造家屋。その間に、電球がぽっと明滅しています。
「絵を描くときにいちばん気をつけていることはなんですか」
と尋ねたら
「遠近。そして、明暗、光と影ですね」
とのお答えでした。
光の調子をとらえるまなざし、微妙な色合いは、草刈さんの絵の、なによりの美質だと思います。
上の画像でも、右端、欧洲を描いた絵は伸びやかに明るく、炭鉱跡の絵はどこかくすんだ調子です。
草刈さんの絵は、いかにもプロ的で、さっさっと才能でもって描いているというものではないと思います。
じっくりと対象を見つめ、わずかな光の加減も見逃すまいと、丹念に色を配置しているのです。ぱっと風景を一瞥して「ああ、こことここはだいたい同じ色だな」と安直に筆を走らせないところが、好感が持てるのです。
今回の個展は、自作のいす、イーゼル、お面なども展示しています。
草刈さんは、非常に器用な方で、重厚な額縁を段ボールで自作もします。
いすは、「瞑想の世界」と題して1983年に自作したもので、座り心地は抜群です。
秋に道新ぎゃらりーでひらかれる示現会支部展には出品するそうですが、
「転居先に、大きな絵を制作できるスペースがあるかどうか」
とのことで、今後は未定の由。とはいえ、いつまでも健筆を振るわれんことを望みたいと思います。
2009年8月22日(土)-30日(日)10:00-19:00
北海道画廊 趣味の郷ギャラリー(中央区南3西2、KT3条ビル=旧HBC三条ビル=2階 地図B)
■第9回示現会北海道作家展(2008年=画像なし)
■第8回示現会北海道作家展(2007年)
■草刈喜一郎個展(2006年)■示現会北海道作家展(2006年)
■第31回GROUP火曜会展・第9回創遊会展
■第4回示現会北海道展(2003年)
■第3回北海道示現会小品展(2002年12月20日の項)
■『スイス』スケッチ紀行展(2002年)
■草刈喜一郎 炭鉱の記憶展(2001年)
=2007年をのぞいて画像なし