札幌のクラブシーンなどで活躍した後、2009年から郷里の網走に戻り、漁業のかたわら絵画の制作を続けている佐々木恒雄さんの、札幌では久しぶりの個展。
オホーツク海の漁師は、基本的には流氷シーズンには仕事が暇になるのだが、昨年の異常気象で多くの網が破れたため、それを繕う仕事のため、2月から忙しくなるという。
クラブと漁業とアート。ふつうなら、結びつかない三つの要素が、佐々木さんの中ではまっすぐに、自然なかたちで結ばれているように、筆者の目からは見える。「And Yet」は「それでも」という意味だという。
北海道の端、札幌から遠く離れて、それでも絵を描く。それでも人に会い、それでも生きていく。
そういう、佐々木さんの静かな決意がこめられている。そのように、筆者は解した。
冒頭の画像は、個展前に滞在制作したもの。「2階」に展示してあった。
黒澤明監督の映画「いきものの記録」のラストシーンと、80年代米のハードコアパンクバンド「MINOR THREAT」のレコード「OUT OF STEP」のジャケットからの引用を組み合わせたもので、「もともとある画像を使って描いたのははじめて」とのこと。
レコードジャケットのほうは、白い羊の群れから黒い羊が1匹逃げ出している図だ。
英語で black sheep といえば、仲間はずれ、厄介者というイメージだ。
しかし、佐々木さんによれば、この歌では黒い羊に対し「あんたは正しい」と言っているというのだが。
(※訂正。「正しい」と言っているのは、歌詞ではなく、佐々木さん本人でした。訂正いたします)
このエントリのいちばん下に、You tubeへのリンクを貼っておいた。
2階にはこのほか、ドローイング6点、小品8点が並んでいた。
1階の北側の壁には、横長の絵画が4点。
抽象的なものから、右側は、独裁者が演説しているような絵柄もあり、多彩だ。
佐々木さんは、スプレーのほか、ナイフのかわりにへらのような道具を使って描いているという。
このほか、玄関脇にも絵が展示されていた。
1階のもっとも目立つ場所にあった「AND YET MEET」。
置戸コンテンポラリーアートでも展示されていたが、白い背景は、冬に見たほうがなんとなくしっくりくるように感じた。
ほかにも、流氷の海や、夜空の星座などを描いた小品もあったが、そういう、叙情的で、自然をそのまま描いた絵ばっかりにはならず、抽象的な絵も手がけるのが、佐々木さんらしい。風景も人物も抽象も、佐々木さんの「生きていること」のすべてなんだろうと思うのだ。
2014年1月21日(火)~26日(日)午前11時~午後7時
temporary space(札幌市北区北16西5)
□公式サイト http://tsuneosasaki.com/
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