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■ クスミエリカ個展 変転のコリドー (2017年9月14日~27日、札幌) 9月23日は9カ所(3)

2017年09月26日 22時01分06秒 | 展覧会の紹介-現代美術
 
 札幌のクスミエリカさんは、舞台写真なども撮りますが、作家として手がけるのは写真のコラージュです。
 札幌芸術の森美術館が企画し開いたグループ展に出品、メインビジュアルに採用されるなど、評価されています。

 コラージュというと、ドイツの画家マックス・エルンストの作品を思い出します。
 エルンストの場合は、素材は古い版画でした。意外なイメージどうしの組み合わせが見る人に驚きを与え、この効果はデペイズマンと呼ばれました。新聞紙の写真を切り貼りしてユーモラスな作品をつくってみた人もいるのではないでしょうか。
 ただし、一時的な遊びではない作品としてこの技法に取り組んでいる人は意外なほど少なく、道内では彼女だけですし、全国でも見た記憶がありません。

 技法の原理は単純ですが、実際に手がけるとなると、かなりの手間がかかります。
 自ら撮影した写真をもとに、フォトレタッチソフトで背景を消し、いくつかのイメージを組み合わせます。
 今回は植物のつるなど、背景が赤い壁か崖で、それを消すのにたいへんな時間を費やしたとのこと。少しでも性能の良いマシンを求め、コンピュータは自作なのだそうです。


 手法としては従来と同じなのですが今回の個展で最も成功したのは、透明なアクリル板にプリントしたことだと思いました。
 ギャラリーの中央につりさげた作品は6枚からなり、見る場所によって、それぞれのイメージの重なり方が異なって見えます。
 ヘビ、植物、建物、船といった画像のくみあわせが、廃墟のようなふしぎなイメージをつくりだします。
 小品は白い板にこれらを転写したものです。


 さらに、屋外のバルコニーにも作品をワイヤで固定して展示しています。
 このギャラリーは緑の小さな谷に面しており、アクリル板の画像と、背景の木々が、渾然一体とした世界を現出させます。透明な支持体だからこそ、このような「借景」が可能になったといえるでしょう。

 これは、実物を見てはじめてわかる魅力だと思います。


 ただ、個人的な希望を申せば、イメージの組み合わせにはさらなる意外性と驚きを求めたいのと、せっかく「外界の現実ととけあう手法」を見いだしたのですから、半径5メートル内の美意識に閉じこもる(いちがいに悪いとは言えないのですが)だけではなく、自らの問題意識をもって現実世界と切り結ぶような作品を期待したいところです。


2017年9月14日(金)~27日(水)午前11時~午後7時、会期中無休
ギャラリー門馬ANNEX(札幌市中央区旭ケ丘2)


クスミエリカ http://kusumierika.com
@ErikaKusumi

2015年の個展

クスミエリカ・白山郁美 二人展 「Parallel」(2014)
ambivalence クスミエリカ展 (2014)

HAKONIWA PHOTO EXHIBITION 2011

写真グループ「HAKONIWA(ハコニワ)」の巨大写真が地下鉄琴似駅メトロギャラリーに登場(2010年)
さっぽろフォトステージPart2 (2009年12月)
HAKONIWA 2008
HAKONIWA(2003) (画像なし)


・地下鉄東西線「円山公園駅」バスターミナルから、ジェイアール北海道バス「循環10 ロープウェイ線」に乗り「旭丘高校前」降車、約130メートル、徒歩2分
・「円山公園駅」バスターミナルから、ジェイアール北海道バス「円13 旭山公園線」に乗り「界川(さかいがわ)」降車、約500メートル、徒歩7分
・「円山公園駅」バスターミナルから、ジェイアール北海道バス「桑11 桑園円山線」「円11 西25丁目線」「循環11 ロープウェイ線」に乗り、「啓明ターミナル」降車、約800メートル、徒歩10分

・地下鉄南北線「中島公園」「幌平橋」から、ジェイアール北海道バス「循環13 山鼻環状線」に乗り「旭丘高校前」もしくは「南11西22」降車

※駐車場もあります。
※帰路は、旭丘高校前で良いバスの便がない場合、階段を下りて「南11西22」までいくと、休日の日中で1時間に5、6本のバスがきます(ただし、行き先は、円山公園駅、都心、桑園駅などバラバラ)




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