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■世界遺産 ラスコー展 東京2017-1(6) =訂正あり

2017年02月28日 01時02分34秒 | 道外で見た展覧会
承前

 じつは、当初は見るつもりはなく、丸の内へ「オルセーのナビ派」でも見に行こうかと考えていた。
 しかし、今後の人生で、またオルセー美術館を訪れることはあるかもしれないが、ラスコー洞窟のほうは、本物を見る機会は絶対にないであろう。だったら、精巧に模した洞窟がフランスからはるばるやって来る今回を逃す手はあるまい。
 そういえば、先日の毎日新聞に、港正尋さんが展覧会について寄稿していた。
(あとで考えてみれば、港さんはあいちトリエンナーレでも書いていたように、ラスコー洞窟が大好きだし、主催は毎日新聞社なので、同紙が今回の展覧会について文章を載せるのも、当たり前といえば当たり前なんだけど)

 というわけで、上野駅前から引き返して、生まれてはじめて国立科学博物館へと足を踏み入れた。

 結論から書くと、たとえ模型とはいえ2万年前の洞窟絵画を目の前で見ることができたのは、感動的だった。
 ただ、東京の展覧会で、会期末とあって、大変な混雑だった。展示は、見に来た親子連れなどがいろいろ参加できるようなくふうがなされていたのだが、ほとんど触れることもないままに終わってしまった。
 付記するなら、図録がわかりやすい。図版が豊富で、説明も詳しいが、やたらと専門的すぎることなく、おもしろく読み進むことができる。ラスコー洞窟などの先史文化に関心がある人は、買い求めて損はない。2000円でした。

※図録は2500円でした。お詫びして訂正します。


 会場はいくつかのセクションにわかれていたが、白眉は二つ目の、洞窟の一部を再現したコーナーだった。
(一部の出土品は撮影禁止だが、多くは撮影可、ストロボ不可でした)

 冒頭の画像は「背中合わせのバイソン」。
 左側はオスだということがわかる。




 右から左へと、シカが首から上を出して移動している様子。
 首から下が描かれていないため「泳ぐシカ」と呼ばれている。






 一部の壁画は、真っ暗になると夜光塗料で光って、線がくっきりとわかるように細工されていた。もちろん、本物がこのように光るわけではない。

 筆者が感動したのは、これらの壁画もさることながら、洞窟内で発見されたランプであった。

 大きな木製のさじのような形をしたランプは、先のまるい部分に油をためて、炎で暗いところを照らす仕組みになっており、発見当時は燃えかすの木炭が入っていたという。これが非常に精巧なもので、とても旧石器時代のものとは思えないほどなのだ。


 順番が前後するが、最初のセクションには、実際の洞窟の10分の1ほどの模型が並んでいた。
 もっとも、洞窟を外側から見ても、あまりおもしろいものではない。



 近くに置かれた板には、内側の絵がかき出されている。




 そして、ミニチュア洞窟の中は、覗き込むこともできる。

 なんでこんな狭いところに、こんな雄大な絵を描いたんだろうって、だれでもふしぎに思いますよね。
 しかも、題材はほとんどが大型の獣。
 ラスコーの場合は、マンモスもなし。

 人間もごく少ないし、木々など植物も描かれていない。




 ただ、ごらんのありさまなので、鑑賞するにはあまりあずましくない感じでした。
 とにかく観客多すぎ。


 会場ではこのほかにも、クロマニヨン人の暮らし、当時の石器や骨器などを数多く展示し、日本独自のコンテンツとして当時の日本列島の様子なども追加して解説していた。
 骨器など、とても細かく加工しているものもあり、人類は昔から「アートする」存在なのだなあと、いたく感銘をうけた。
 絵とか装飾とかは、直接的にはなんの役にも立たない。にもかかわらず、クロマニヨン人は古くからそういうことをしていたのだ。

 アートって、人類の本能なのではないのだろうか。


 なお、ひとつだけ個人的な考えを記せば、どうして人がやっと通り抜けられるような洞窟の奥に壁画を描いたかという理由だが、たまたま洞窟の奥だけが現代まで残ったのであって、当時は外にある岸壁などにも絵は描かれていたのかもしれない。もちろんそれらは長い年月の間に風化しただけかもしれない、と思った。
 そして、今なお発見されない洞窟の奥に、壁画が人知れず眠っているかもしれないのだ。



2016年11月1日(火)~17年2月19日(日)、国立科学博物館(東京都台東区上野公園)

3月25日(土)~5月28日(日) 東北歴史博物館 (宮城県多賀城市高崎1-22-1)

7月11日(火)~9月3日(日) 九州国立博物館 (福岡県太宰府市石坂4)


(この項続く) 


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