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■佐藤潤子個展 (11月4日まで)

2007年10月31日 23時33分06秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 
 佐藤潤子さん(札幌。道展会員)の絵は抽象画だ。だけど、筆者には、すごくわかりやすい絵だと思える。
 波が激しく打ち寄せる海岸に立ったとき、人は多かれ少なかれ感動する。その感動を、絵にしているのではないかという気がするのだ。
 つまり、海とか、波しぶきそのものを描くのではなくて、
「海から受けた気持ち」
とか
「波の感動」
を描いているのだ-というふうに見ると、とてもわかりやすいといえるのではないか。

 100号以上の大作が16点という、すごいパワー。
 だが、うち道展出品作2点をのぞけば、のこりはすべてこの春から取りかかったと言うから驚くしかない。

 自宅のアトリエはわずか6畳しかない。
 おなじ南区の高齢者施設で絵を教えており、そこの部屋が使えたおかげで、じゅうぶんに制作できたという。


      

 佐藤さんが近年発表している絵は縦に白いロープが巻かれていることが少なくない。
「じぶんと世界をつなぐものなんです」
というような意味のことをおっしゃっていた。
 一方で、「真波-うねり」の連作のように、F100号キャンバス2枚の間の壁に、ロープをはりつけた縦に細長い支持体を、掛けたものもある。
 「真波-うねり」は、流氷の海の航空写真みたいにも見える。
 「重鎮の先生からは『これは具象ではないか』といわれて…」
と佐藤さんは頭をかいていたが、筆者には、具象とか抽象とかそんなことはどうでもいいんじゃないかと思えてくる。

 「真波-うねり I」は、絵の具が乾かないうちに、前述の施設の屋上に出してわざと雨に当てたという作品。
 雨のおかげですこしやわらかい感じになったという。
 リキテックスと油絵の具を混用した絵ならではの実験といえるかもしれない。


      

 絵の具をぶちまけたような作品が多い中で、上の画像の「想い I」は、めずらしく、形態のようなものが見える1点。
 香月泰男のシベリアシリーズで、井戸の底から空を見上げた絵に感動した佐藤さんが
「じぶんも魚になって海の底から空を見たらどんな感じだろうと思って書きました。おこがましいかもしれませんが」。

           

 左側にあるロープは、「真波-うねり」の2枚のキャンバスに挟まれて置かれているのと同じく、日本海の港町で実際に使われていたもの。機械による製造が主流になったいまはほとんど手に入らないそうだ。
 灰色に、漁業者の汗がしみこんでいるように思えた。
 右側の、カラフルな絵は「夕」「陽」「夜」の三部作。
 まず、これに線を引いて気分を出してから、ほかの大作にとりかかったという佐藤さん。
「ははあ、ピアノの練習での『ハノン』みたいなもんですね」
と言うと、きょとんとされてしまった。

 会場全体が、海のうねりに覆われているような、清新な感銘を受けた。


 出品作はつぎのとおり。
「つなぐ I」「つなぐ II」
「夕」「陽」「夜」(以上F100)
「想い I」「想い II」「想い III」(以上F130)
「海風」(P100)
「海へ…’07-II」「海へ…’07-I」「海へ…’07-III」「海風…’06」「海へ…’05」(以上F120)
「真波-うねり-I」「真波-うねり-II」「真波-うねり-III」「真波-うねり-VI」「藻」(以上F100)
「波間」(M40)
「うず潮-I」(P50)
「うず」「初日」(以上F6)


07年10月30日(火)-11月4日(日)10:00-18:00
スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階 地図B)

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