気がついたら「500m美術館」の展示の終わりが近づいていたので、ごくおおざっぱに紹介します。
2カ月間もあったのに、なにやってんだって感じですが。
今回は、東側(バスセンター前駅寄り)半分が「冬のミカタ」、西側(テレビ塔・大通駅寄り)が「500m美術館賞」の展示になっています。
冒頭画像は「冬のミカタ」に展示されている、北翔大の村田アグネス彩さんの「I'd Rather Dance With You」。
2月に札幌市内のポルトギャラリーで開かれた同大の学生展「VON BAYAGE」で、おなじ作者の幅9メートルはあろうかという大作を見て度肝を抜かれた記憶も新しいですが、今回も巨大です。具象的なモチーフは姿を消し、さまざまな文様の不定型な面が連なっています。
さらに、色が変化する照明が画面上部に当たって、
「構成が緊密か」「奥行き感があるか」
と問われると、まだ発展途上というべきなのでしょうが、これだけの大画面を作ったというだけでもすごいと、筆者は思います。
「冬のミカタ」からもう1点。
「なかいれい」名義での発表も多いイラストレーター中井令さんの「Mountain」。
こちらも大作。雪山が擬人化されていて、シンプルに楽しいです。
500m美術館のサイトによると、この企画を担当した「500メーターズ」とは、「500m美術館を拠点に、アートマネジメントを学びながら活動するボランティアチーム」とのこと。
キュレーティングの意図について
「少しワクワクするような『冬を楽しむプラン』を500m美術館で提示して、みんなで寒い冬を乗り切っちゃおう!と考えました。」
とありますが、実際に集まった作品は、絵画あり、写真記録ありで、ばらばらです。
実際にアイデア提示をいろいろ行っていたのは「札幌オオドオリ大学雪部」です。たしかに楽しいのですが、個人的には、こったらことやってる時間ないよなあ~、うらやましいなあ~と思ったりします。
あと、赤坂真一郎さんと風間天心さんがいずれも、モエレ沼公園で展開した「SNOW SCAPE MOERE」を振り返っているのが興味深いです。
2009年の「SNOW SCAPE MOERE」とか、ほんとうになつかしいです(リンク先、写真がきれいなので、良かったらご覧ください)。
他の出品者は次の通り。
加賀城匡貴
斉藤幹男
進藤冬華
東方悠平
雪育×佐藤圭
石山ひなの/ 岩崎麗奈(Think School )
園山茉生/ 原雅司(札幌市立大学)
雪かき本舗(札幌大谷大学)
鷲尾幸輝 / 木津遼真(北海道教育大学)/ 石倉健太郎(北海学園大学)
ただ、このコーナーのキャプションパネルが、色の選択がうまくなく、左側の文字が全く読めません。もう少し明度などを考えてほしいなあ。
第6回500m美術館賞は、札幌国際芸術祭のバンドメンバー藪前知子さんと有名な美術批評家の椹木野衣さんの審査の結果
「阿児つばさ/T」
「Kit_A」
の両氏がグランプリに選ばれました。
阿児さんはオホーツク管内美幌町出身。
現在は兵庫県がいちおうの拠点で、国内外で制作・発表しているそうです。
「氷橋幌」という表題が目立っています。
「幌」は道内の地名の場合、「大きい」という意味のアイヌ語に由来することが大半ですが、筆者は後置修飾の例を知りません。「幌」で終わる地名も、あるのかもしれませんが。
かつて上川管内音威子府村で厳冬期に造られていた氷の橋の資料写真が興味深かったです。
音威子府あたりまで北上すると天塩川は相当な幅の広さがあり、このようなことも可能だったのでしょう。もちろん、温暖化した上、通年利用できる橋ができた現在では造られていません。
Kit_A さんは札幌を拠点とする作家。
工事現場などに置かれているコーンをテーマに制作を続けているので、ご存じの方も多いと思います。
3月にはプラニスホールのグループ展でも発表していましたが、そちらが、コーンを人に持ってもらって撮影した写真が中心の、いわば「コミュニケーション」が裏テーマの展示だったのに対し、500m美術館のほうは、コーンそのものと、そのイメージを大量に提示するものとなっています。
いうなれば「物量作戦型リサーチアート」と呼べるような展示ですが、コーンをモチーフとした絵画っぽい作品もあります。
そのリサーチの成果を列挙した中に、シンセサイザーを駆使した無機的なサウンドで広汎な影響を与えたドイツのバンド「クラフトワーク」のアルバムジャケットがあり、ジャーマンロック好きの椹木野衣さんの琴線に触れたことが、今回の受賞の隠れた要因かもしれない―などと思いました。
※追記。審査はプラン段階で行ったため、椹木さんが審査の段階でクラフトワークのジャケットを見たわけではありません。訂正いたします。
西の端には、コーンのある風景を撮った写真が大量に並んでいました。280枚ぐらいありそうです。
2018年1月27日(土)~3月28日(水)午前7時30分~午後10時
札幌大通地下ギャラリー500m美術館(札幌市営地下鉄東西線 大通―バスセンター前間コンコース) http://500m.jp
□akotsubasa.xyz/
□http://siaf2014cone.blogspot.jp/
□@yellow_sky_t https://twitter.com/yellow_sky_t
2カ月間もあったのに、なにやってんだって感じですが。
今回は、東側(バスセンター前駅寄り)半分が「冬のミカタ」、西側(テレビ塔・大通駅寄り)が「500m美術館賞」の展示になっています。
冒頭画像は「冬のミカタ」に展示されている、北翔大の村田アグネス彩さんの「I'd Rather Dance With You」。
2月に札幌市内のポルトギャラリーで開かれた同大の学生展「VON BAYAGE」で、おなじ作者の幅9メートルはあろうかという大作を見て度肝を抜かれた記憶も新しいですが、今回も巨大です。具象的なモチーフは姿を消し、さまざまな文様の不定型な面が連なっています。
さらに、色が変化する照明が画面上部に当たって、
「構成が緊密か」「奥行き感があるか」
と問われると、まだ発展途上というべきなのでしょうが、これだけの大画面を作ったというだけでもすごいと、筆者は思います。
「冬のミカタ」からもう1点。
「なかいれい」名義での発表も多いイラストレーター中井令さんの「Mountain」。
こちらも大作。雪山が擬人化されていて、シンプルに楽しいです。
500m美術館のサイトによると、この企画を担当した「500メーターズ」とは、「500m美術館を拠点に、アートマネジメントを学びながら活動するボランティアチーム」とのこと。
キュレーティングの意図について
「少しワクワクするような『冬を楽しむプラン』を500m美術館で提示して、みんなで寒い冬を乗り切っちゃおう!と考えました。」
とありますが、実際に集まった作品は、絵画あり、写真記録ありで、ばらばらです。
実際にアイデア提示をいろいろ行っていたのは「札幌オオドオリ大学雪部」です。たしかに楽しいのですが、個人的には、こったらことやってる時間ないよなあ~、うらやましいなあ~と思ったりします。
あと、赤坂真一郎さんと風間天心さんがいずれも、モエレ沼公園で展開した「SNOW SCAPE MOERE」を振り返っているのが興味深いです。
2009年の「SNOW SCAPE MOERE」とか、ほんとうになつかしいです(リンク先、写真がきれいなので、良かったらご覧ください)。
他の出品者は次の通り。
加賀城匡貴
斉藤幹男
進藤冬華
東方悠平
雪育×佐藤圭
石山ひなの/ 岩崎麗奈(Think School )
園山茉生/ 原雅司(札幌市立大学)
雪かき本舗(札幌大谷大学)
鷲尾幸輝 / 木津遼真(北海道教育大学)/ 石倉健太郎(北海学園大学)
ただ、このコーナーのキャプションパネルが、色の選択がうまくなく、左側の文字が全く読めません。もう少し明度などを考えてほしいなあ。
第6回500m美術館賞は、札幌国際芸術祭のバンドメンバー藪前知子さんと有名な美術批評家の椹木野衣さんの審査の結果
「阿児つばさ/T」
「Kit_A」
の両氏がグランプリに選ばれました。
阿児さんはオホーツク管内美幌町出身。
現在は兵庫県がいちおうの拠点で、国内外で制作・発表しているそうです。
「氷橋幌」という表題が目立っています。
「幌」は道内の地名の場合、「大きい」という意味のアイヌ語に由来することが大半ですが、筆者は後置修飾の例を知りません。「幌」で終わる地名も、あるのかもしれませんが。
かつて上川管内音威子府村で厳冬期に造られていた氷の橋の資料写真が興味深かったです。
音威子府あたりまで北上すると天塩川は相当な幅の広さがあり、このようなことも可能だったのでしょう。もちろん、温暖化した上、通年利用できる橋ができた現在では造られていません。
Kit_A さんは札幌を拠点とする作家。
工事現場などに置かれているコーンをテーマに制作を続けているので、ご存じの方も多いと思います。
3月にはプラニスホールのグループ展でも発表していましたが、そちらが、コーンを人に持ってもらって撮影した写真が中心の、いわば「コミュニケーション」が裏テーマの展示だったのに対し、500m美術館のほうは、コーンそのものと、そのイメージを大量に提示するものとなっています。
いうなれば「物量作戦型リサーチアート」と呼べるような展示ですが、コーンをモチーフとした絵画っぽい作品もあります。
そのリサーチの成果を列挙した中に、シンセサイザーを駆使した無機的なサウンドで広汎な影響を与えたドイツのバンド「クラフトワーク」のアルバムジャケットがあり、ジャーマンロック好きの椹木野衣さんの琴線に触れたことが、今回の受賞の隠れた要因かもしれない―などと思いました。
※追記。審査はプラン段階で行ったため、椹木さんが審査の段階でクラフトワークのジャケットを見たわけではありません。訂正いたします。
西の端には、コーンのある風景を撮った写真が大量に並んでいました。280枚ぐらいありそうです。
2018年1月27日(土)~3月28日(水)午前7時30分~午後10時
札幌大通地下ギャラリー500m美術館(札幌市営地下鉄東西線 大通―バスセンター前間コンコース) http://500m.jp
□akotsubasa.xyz/
□http://siaf2014cone.blogspot.jp/
□@yellow_sky_t https://twitter.com/yellow_sky_t
紹介ありがとうございます。
クラフトワークの1stLPについてですが、審査の段階ではそこまでの細部までの計画ではないので、椹木さんは他の一般の方と同じく展示した段階で観ています。
ただ、その話があがらない訳はないので、トークのときは椹木さんの「後美術論」を持って行ってしっかりサインして貰いましたよ。
私にあったときの第一声も「あれ、よく手に入ったね」でしたよ。(笑)
因みにあれは、私が小学生か中学生のあがる頃に買ったものです。
文章はさっそく追加しておきました。早とちりで、申し訳ありません。
それと、こんな長期間の会期なのに、アップが遅れてギリギリになってしまい、これまたすみません。
私もジャーマンプログレは好きなので、やっぱり反応してしまいます。
展示はけっこうな分量ですよね。お疲れさまでした。