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■近代洋画の挑戦ー新しい表現を求めて―(2021年1月16日~3月7日、北見)

2021年02月23日 09時13分16秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 「アートが好きなんです」
と言うと
「へ~、絵を見るんだ」
と返されることがよくあります。
 彫刻も陶芸も現代アートも美術なのに、なぜか
「アート・イコール・絵画」
という図式がアタマのなかで固まってしまっている人が、とくに年配の方に多いという印象があります。

 戦後、文学全集と同じように美術全集があちこちの出版社から出されました。
 そこでは、梅原龍三郎や安井曾太郎といった画家が代表的な存在として君臨していたのです。
 また、ギャラリーを「画廊」と訳したことからもわかるように、ギャラリーでは主に絵画の展示が想定されていましたし、実際に札幌時計台ギャラリーなどでは絵画の展覧会が大半でした。
 絵画、なかでも洋画こそが美術の本流として無意識のうちに認識されていたのです。
 
 もっとも、国立美術館がない北海道では、昭和の画壇を彩る大家たちの実物を見る機会に恵まれないまま、いつのまにか時代は洋画から現代アートへとシフトしつつあります。
 そういう時期にあらためて、これまでの日本近代美術の基本というか王道ともいうべき画家たちの絵を実見できる貴重な展示ではないかと思います。
 今回の作品はすべて、砂糖の業界団体である「公益社団法人 糖業協会」の所蔵品です。
 「メセナ」という言葉が滲透するずっと以前から国内の洋画家の作品を買い続けてきたというのはすごいし、それを無料で貸し出しているというのも大したものです。

 メインビジュアルに用いられているのは安井の「女と犬」(1940)。
 緊張感のある縦構図ですが、場面の雰囲気自体は安らぎを感じさせます。
 ライバルの梅原は3点。「紫禁城の黄昏」(1939)は、オレンジの夕空がダイナミックで鮮烈です。

 野口弥太郎は、いかにも日本的フォーブという感じの、やわらかく丸みを帯びた筆触。「上海」(1941)などが安定した構図の世界を創り出しています。
 小磯良平「朝」(1939)はハマスホイを想起させる、色数の少なく落ち着いた室内画です。
 井上長三郎「紫陽花」(1939)は、退嬰的な絵の多いという印象の画家なのに、欧洲の絵のようなきりっとした存在感があります。

 唯一存命の画家が、札幌出身の笠井誠一「独楽と玩具」(1977)。
 この画家らしい、考え抜かれた色の配置による静物画です。

 いちばん古いのは和田英作「静物(果物)」(1920)。
 新しいのは「独楽と玩具」と井上長三郎「馬(ドンキホーテ)」です。

 他の画家は、
藤島武二、満谷国四郎、熊谷守一、石井柏亭、有島生馬、金山平三、齊藤与里、川島理一郎、清水登之、小絲源太郎、小林和作、牧野虎雄、須田国太郎、鈴木保徳、中川紀元、児島善三郎、中山魏、中川一政、曽宮一念、青山義雄、高畠達四郎、里見勝蔵、林武、東郷青児、福沢一郎、伊藤廉、鳥海青児、猪熊弦一郎、刑部人、津田正周、山口薫、松田文雄、森芳雄、麻生三郎

 よく知らない画家もいますが、まずは
「そうそうたる顔ぶれ」
「近代洋画のオールスター」
といってさしつかえないと思います。
 繰り返しになりますが、これだけの画家の作品をまとめて見られる機会は、北海道ではほとんどありません。見る価値のある展覧会だと思います。
 

2021年1月16日(土)~3月7日(日)午前9時半~午後5時(3月6、7日のみ~午後9時)、月曜休み
北網圏北見文化センター(北見市公園町)

一般700円、高大生400円、小中生・70歳以上200円。未就学児無料、障害者手帳等所持者とその介助者1人は無料

□公益社団法人 糖業協会 https://sugar.or.jp/



・「北見駅」から北海道北見バス「1 小泉三輪線(小泉行き)」に乗り、「野付牛公園入口」で降車し、徒歩5分ほど
※「1」系統のバスは、朝7時台から夕方6時台まで完全15分間隔で運転。乗車時間は5分ほど。210円均一。駅を出て、国道を渡り、交番の向かい側(北見信金本店前)にある停留所から乗車

・JR北見駅から約2キロ、徒歩24分

北網圏北見文化センターへの道順(アクセス)


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