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■第50回記念美工展 (2024年4月17~21日、札幌)

2024年04月26日 18時36分59秒 | 展覧会の紹介-工芸、クラフト
 北海道美術工芸協会が主催し、毎年春に開かれている「美工展」は、工芸部門だけの団体公募展としては道内唯一です(道展、全道展、道美展には「工芸部門」がありますが、絵画など他の部門もあります)。

 1973年に発足、第1回展を翌74年に丸井今井札幌本店で開き、75年に「北海道手工芸美術協会」という名称を定めました。
 84年に現名称に変更し、89年に会場を現在の札幌市民ギャラリーに移しました。
 90年に公募展となりました。
 回数の計算が合わないのは、2020年はコロナ禍のため中止になっているためです。
 
 
 山谷智子事務局長のオブジェ「松籟」です。
 壺と異なり、穴があいていません。表面への文様の施し方が絶妙です。

 さて、今年は会員出品が23点、会友が6点、一般入選が20人(24点)でした。
 ジャンル別にみますと

 組紐 10
 織  7
 染色 6
 陶芸 5
 押花 3
 ガラス 3
 木工 2
 ペーパークラフト 2
 皮革 2
 和紙絵 2
 刺繍 2
 人形 2
 木彫 1
(記載なし 1)

 の順でした。
 金工、籐、ボビンレース、葉彩画など、出品者が近年までいた分野は、ゼロになっています。

 最多の組紐は、従来の枠にとどまらない作品がありました。冒頭画像の瓜生幸さん(会員)「波」もそのひとつです。
 

 
 3枚目の画像、左側は今年の協会賞を得た志水文恵さん「イマジナルセル」。
 最高賞に当たる協会賞は、該当がない年も多く、2021年以来となりました。

 右側は奨励賞を得た池田葉子さんの織「冬ざれ」。
 異素材をさりげなく織り込んだ意欲作です。
 
 
 「イマジナルセル」は、遠くから見ても分かりませんが、近づくと、色のついた糸を円の周囲に等間隔で打たれたピンとピンの間に張り渡されて複雑な文様を表現しており、思わず息をのみます。

 今年は三つの円が配され、左下は174本のピンの間を青と緑と紫の糸が、右下は177本のピンの間を黄と緑の糸が、上は168本のピンの間をオレンジと赤の糸が行ったり来たりして、シャープな階調を生んでいます。

 今回は「その他」という分類になっていますが、協会賞・会友推挙を受けて、来年からは「糸かけアート」というジャンルが新設されるのでは―という話でした。 
 
 
 新会友推挙となった浅沼優子さん「summertime ~時計草」(ガラス)。
 おそらくグラス・グリプティと呼ばれる技法で、硬い尖端の道具でガラス板の表面を削って模様をつけています。
 今回が第50回ということで、50回の時の流れをテーマとし、時計と時計草を精緻に描いた力作になりました。
 
 ガラスを重ねているのか、あるいは彫り込む深さを変えているのか分かりませんが、時計草のおしべやめしべが浮き上がって見えます。

 佐藤隆之さん(会員)のペーパークラフト「LION」は、会場に人だかりが絶えません。
 作品のパワーもさることながら、佐藤さんの話術のおもしろさも一因と思います。
 毎年作品が少しずつ大きくなっているようで、今回は
「あとさき考えずに作りだしたら、家の玄関から出すのがやっとだった」
と笑っていました。

 ほかに気になった作品。

 篠木正幸「dawn」。
 横に長い作品。白い山並みのような部分の上側が、あたかもぬれているように見える。どのような加工をしたのでしょう。

 稲垣由美子さん、福井るみさんは2点入選。
 稲垣さんはモノトーンとカラフルと、対照的な作風でした。

 増子抄織さんの「ともしび」は、作品の背後から照明で照らして展示していました。そりゃ明るいはずです。影絵のような効果をあげていました。


2024年4月17日(水)~21日(日)午前10時~午後6時(最終日~4時)
札幌市民ギャラリー(札幌市中央区南2東6)

https://sites.google.com/view/hokkaidoubikouten/

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