北海道美術ネット別館

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■Retro Machinism_暖かな機械 (2019年4月16~29日、札幌/5月18日~6月15日、東京・向島)

2019年04月28日 22時47分23秒 | 展覧会の紹介-現代美術
 十勝管内豊頃町を拠点に活動している白濱雅也さんは、自作の制作・発表はもちろん、展覧会の企画も行っており、つい3月は本郷新記念札幌彫刻美術館で「Post 3.11 in Sapporo 〜沈み行く記憶の淵で」という5人展を開催したばかりである。翌月には、まったくテイストの異なる本展覧会を札幌で開く(5~6月に東京に巡回)上、帯広の真鍋庭園で野外展示を始め(これは旧作だが)、さらにこの間本州にも足を伸ばしているのだから、その獅子奮迅ぶりには驚くばかりだ。

 今回は道内から白濱さんと伊賀信さん(札幌)。
 道外から大城夏紀さん(神奈川)と片平仁さん(福島市)が出品した4人展。

 冒頭画像の右側が片平さんのCG。
 「Modern sculupture?」
「War machine」
「In a power plant 2」
「The apartment for snakes」
「War machine 1」
「War machine 2」
「In a power plant 2」

 架空の機械を描いているようだ。
 機械に美を見出したのはイタリアの未来派だが、あれから100年以上たった今、アーティストのイマジネーションが生む機械ははるかに高度化、複雑化している。

 会場では気がつかなかったが、このタイトルはドゥルーズ=ガダリを想起させる。

 左側は大城さん。
 「attachiment / Fresh yellow morning」など。

 展覧会のリーフレットには
「工業製品のシリーズでは、その意味と形態が一致するものを色面に置き換えて構造を辿ることで、ものとものに付随する意味との距離感や関係性を提示する」
とある。
 ポップで明快な色彩が、機械の機械的な部分を強調するとともに、機械らしくなさも表現しているということだろうか。

 白濱さんの作品は、色に由来する題がついているものが多い。
 モティーフは1970~80年代に若者の必需品となったラジオカセットテープレコーダー(ラジカセ)だ。

poke model -1
Green field -1
Indigo cliff -1
Burn -1
Peach-pie 1
Tangerine -1
Love letter -1
Blue horizon -1
Search The Future
Indigo -1

 つぎの画像は「Green field -1」と「Indigo cliff -1」。

 これらの絵は一見、趣味的、懐古的なものに見えるかもしれない。
 ただ、かつて「機械」といえば、非人間的なもの、冷酷なものとみられていたのに、世の中にデジタルがあふれる時代になり、むしろ人間的であたたかみのある存在とみなされるようになってきた。そういう価値観の転換が、この4人展の大きなバックボーンになっていることは間違いなさそうだ。

 1970~80年代の若者は、親たちの見るテレビ番組にも聴く音楽にも興味が持てなかったから、自室に閉じこもってラジオにダイヤルをあわせ、気に入った音楽があるとカセットテープに録音して何度も聴いた。
 好きな曲を1本のカセットテープに編集して、級友に貸したりもした。
 そういう意味では、いまの若者が親たちとは別にスマートフォンに画面に夢中になっているということは、べつだん非難される筋合いのものではない。
 ただ、現代の親世代はロックミュージックを聴く。これは1970~80年代にはありえなかったことである。 
 親世代とティーンエイジャーが共通の音楽の話題を持ちうることが、2010年代末の特徴といえるかもしれない。


 最後は伊賀さんである。

 「用途不明部品」
「今は無き『明日へ』の先端」
といった題が物語るとおり伊賀さんの作品はシャープでかっこいいのであるが、何に使うのかよくわからない。
 「無駄にカッコいい」という特徴が今回はよく出ていると思う。

 といって、けなしているわけではない。
 もともとアートというのは「役に立たない」のが用途なのだ。

 花鳥風月や深山幽谷といった従来の美からもっともかけ離れた位置にあったかに思われた機械が、いまや「美しい」存在になってしまったことの逆説が、この展覧会ではあらためて提示されているのではないかと思う。


 最終日午後3時からトークがあります。


2019年4月16日(火)~29日(月)午前10時半~午後9時半(日曜~午後8時、最終日~5時)
TO OV cafe / gallery(ト・オン・カフェ=札幌市中央区南9西3 マジソンハイツ)


□白濱さん公式サイトhttps://ameblo.jp/shirahamamasaya/
□Art Labo 北舟/NorthernArk https://mmfalabo.exblog.jp/
□ツイッター@shirahamamasaya

Post 3.11 in Sapporo 〜沈み行く記憶の淵で (2019)
塔を下から組む―北海道百年記念塔に関するドローイング展 (2018)
(4)ゲストハウス×ギャラリープロジェクト Sapporo ARTrip「アートは旅の入り口」―最終日に行った会場のこと
裏物語 ヘンゼルとグレーテル ー帯広コンテンポラリーアート2016 ヒト科ヒト属ヒト
「北風太陽神」ー防風林アートプロジェクト




□G.A.A.L.サイト http://gaal.jimdo.com/
□ツイッター @IGAMAKOTO
□Instagram makotoiga

伊賀信個展「GEOSPACE」 (2016)
想像の山脈 (2015)
【告知】想像の山脈 vol.1
ギャラリー創開廊5周年企画展 G.A.A.L 伊賀信作品展 (2012)
G.A.A.L Exhibition 2008
伊賀信個展(07年7月)
05年の個展
03年の個展(画像なし)
02年の個展(画像なし)


□大城夏紀|Natsuki Oshiro oshironatsuki.com/


□Jin Katahira www.jlovesmini.com/




・地下鉄南北線「中島公園駅」から約220メートル、徒歩3分
・地下鉄東豊線「豊水すすきの駅」から約600メートル、徒歩8分

・中央バス、ジェイアール北海道バス「中島公園入口」から約380メートル、徒歩5分

・市電「山鼻9条」から約610メートル、徒歩8分


2019年5月18日(土)~6月15日(土)正午~午後7時、土曜のみ
NEWLD(東京都墨田区向島4-20-16-101)


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2 コメント

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Unknown (白濱雅也)
2019-04-28 22:56:43
ご紹介とレビューありがとうございます。芳名がなかったようなのですがよく見てくださって嬉しいです。リンクさせてください。
リンクありがとうございます (ねむいヤナイ@北海道美術ネット別館)
2019-04-28 23:26:39
 あらら、わたし芳名帖に書かなかったでしたっけ。失礼しました。

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